WDS(廃棄物データシート)の作り方

WDS(廃棄物データシート)の作り方

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WDS(廃棄物データシート)の作り方

廃棄物処理法では、産業廃棄物を適切に処理するために、委託先の処理業者へ廃棄物に関する情報を提供することが定められています。この情報提供は、廃棄物データシート(Waste Data Sheet、以下WDS)という書類での情報提供を推奨しています。

しかし、実際にはWDSを使用せず契約書へは簡易的な表記を行ったうえで、サンプルや分析表を提供するのみという対応となる場合も少なくありません。

WDSは項目が多く、「書き方がよく分からない」「なんとなく面倒くさい」という担当者の苦手意識も少なからずあるのではないでしょうか?確かにWDSには15の項目があり、多く感じるかもしれませんが、だからこそサンプルや分析表だけではカバーできない情報も適切に伝えることができます。

各項目を簡単に確認してみましょう。

環境省HPから様式がダウンロードできるので、こちらを手元に置きながら読んで頂くと、イメージが付きやすいと思います。

1.排出事業者

社名や所在地、部署、担当者及び連絡先を記入します。

緊急時の連絡先として明記する意味合いがあるので、担当者欄にはWDSの内容について把握している方を記載してください。契約書のように「工場長」など役職の高い方である必要はありません。

2.廃棄物の名称

ここでの名称は、法律上の20種類にこだわらず、固有の名称を記載します。

例えば、法律上の「廃アルカリ」だけでなく「脱脂工程廃アルカリ廃液」などのように、お互いが具体的にイメージできる名称が望ましいです。特に「廃アルカリ」だけでも数種類排出されるような事業場は、排出工程や成分を名称の中に入れて、取り違いが発生しないように工夫します。

3.廃棄物の組成、成分表示

組成、成分について、混合比率が高いと思われる順に記載します。

(例)

苛性ソーダ(NaOH):40~50%

グリセリン:5~10%

水:40~55%

のように、ばらつきがある場合は、想定される振れ幅を踏まえて記載します。混合前の製品について、MSDSやSDSがある場合にはCAS No.を記載します。分析表がある場合は、添付することで記載を省略することができます。ただし、ここでの分析表は組成・成分が分かる分析表である必要があります。

例えば、廃棄物処理委託前の分析は、13号分析と呼ばれるものが使われますが、これは管理型埋立処分場に搬入するための基準を満たしているかどうかを判断する分析です。項目は限定され、組成・成分が分かる分析とは言えませんので注意が必要です。

4.廃棄物の種類

この欄では、法律上の区分に従って、産業廃棄物か特別管理産業廃棄物かをレ点でチェックし、さらに詳細な品目もチェックします。有害物質が付着した廃プラのように選択肢にない場合は、その他に直接記入します。

5.特定有害物質

法律上の埋立基準が設定されている有害物質について、含有の有無を記載します。

有りは○、無しは✕、可能性がある場合は△を書き込みます。ポイントはすべての物質に対して、含有していなくても(✕)と記入する点です。おそらく、空欄だと記入漏れとの区別がつかなくなってしまうからだと思われます。

この項目も分析表添付によって省略できます。これは「3.廃棄物の組成・成分表示」とは違い、埋立基準の物質について含有の有無が分かれば良いので、13号分析でOKです。

6.PRTR法対象物質

排出事業場がPRTR法の届出対象事業場であるかどうかを記載します。

(該当・非該当)のどちらかを囲います。また委託する廃棄物が対象物質を含んでいるかも、(該当・非該当)で記載します。さらに、第一種特定化学物質を含有する場合は、具体的な物質名も記載します。

7.水道水源における消毒副生成物前駆物質

ヘキサメチレンテトラミン(HMT)など8物質が列挙されているので、該当する場合はレ点チェックをします。これらは、浄水場での消毒でホルムアルデヒドを発生させる可能性があり、浄水場の機能を妨げる物質です。

8.その他有害物質

その他、廃棄物の処理時や処理後に問題となる代表的な物質が列挙されています。こちらは特定物質と同様に○✕△を記入します。分析表添付で省略できますが、組成・成分が分かる分析が必要です。

9.有害特性

爆発性や急性毒性など、処理の過程で問題となる特性が列挙されています。まず、(有・無・不明)のいずれかを丸で囲みます。有の場合は、該当する項目を全てレ点でチェックします。不明の場合は、処理業者と対応を十分協議してください。

10.廃棄物の物理的性状・化学的性状

形状や臭い、色などの項目がありますので、該当するものを分かる範囲で記載してください。全ての項目を埋める必要はありせんが、適正処理に必要と考えられる項目を埋めていきます。例えば、廃液であれば、臭いや色、pH、沸点などの情報が必要です。

11.品質安定性

廃棄物の性状が、時間の経過によって変化する場合、処理過程で問題となるおそれがあります。そのため、腐敗や揮発、化学反応等の経時変化の有無を記載します。

経時変化(有・無)のどちらかを選択し、囲みます。有の場合には具体的に記入します。

12.関連法規

対象の廃棄物が、廃棄物処理法以外の規制対象となる場合があります。

危険物取扱者(消防法)など、関連法規の内容が列挙されているので、当てはまるものを囲います。「3.廃棄物の組成・成分表示」でMSDSの情報を記載した場合は、MSDSにも薬品自体の関連法規が記載されているので、参考にできます。

13.廃棄物の荷姿

容器・車両・その他の項目がありますので選択し、さらに具体的に記載します。容器(ドラム缶)、車両(バキューム車)といった具合です。

14.廃棄物の排出頻度・数量

(スポット・継続)をまず選択し、数量を記入し単位を選択します。継続の場合のみ、(年・週・日)も選択する必要があります。

15.特別注意事項

取り扱う際に必要と考えられる注意事項を記載します。まず(有・無)を選択し、有の場合は内容を記載します。自由記述なので、その他の項目で言及されていない注意事項を広く検討し、記載していきます。

「項目になかったから情報を出さない」ということではなく、何か提供が必要な情報があるのであればしっかりと記載することが求められます。

【参考】その他の情報

最後の項目です。その他となってはいますが、サンプルの有無や発生工程等の情報記載があります。WDSの他に提供した情報があれば、記載し「そちらも合わせて確認してください」というメモ的な欄と考えましょう。

該当品目はなるべくWDSの作成を

いかがでしょうか?WDSの雛形は、項目ごとに補足があるので、雛形を見ながらであれば作成自体は可能ですが、今回はさらに少しだけ丁寧に細く解説してみました。

実は、「そもそも、なんとなく面倒でWDSを作成したことがない」という方も多いのではないかと思います。

面倒な気持ちも分からなくはありませんが、サンプルと分析表だけでは、後々のトラブルになる場合があります!もっと多くの廃棄物にWDSを作成し、情報交換がスムーズに行えると良いのではないでしょうか?

上記を参考に、まずは作ってみようと思っていただければ幸いです。

Takeshi Sato 環境情報ソリューショングループ マネージャー

セミナーインストラクターとして、数々のセミナーを担当。オンラインセミナーの実施やeラーニングシステムを使った動画コンテンツの制作にも注力する。コンテンツの企画から講師までを一貫して手掛け、通年80回以上の講師実績を持つ。 また、イーバリューの法令判断担当として、クライアントの法解釈に関する質問や相談に対応。対応件数は年間約1,000件に上る。法令知識だけでなく、省庁や管轄自治体等の行政への聞き取り調査も日常的に行っており、効果的な行政対応のノウハウを持つ。