シリーズ「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」の廃棄物管理への影響 第2回 「販売・提供段階」の取り組み

シリーズ「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」の廃棄物管理への影響 第2回 「販売・提供段階」の取り組み

コラムCOLUMNS

  • 法改正

シリーズ「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」の廃棄物管理への影響
第2回「販売・提供段階」の取り組み

第2回からは、プラスチック新法の具体的な法律の内容を見ていきます。
まず、簡単に法の概要を整理しておきましょう。

法の目的はプラスチックの資源循環を促進することです。そのために「設計・製造段階」「販売・提供段階」「排出・回収・リサイクル段階」の大きく3段階に分けて考えられています。

設計・製造段階の取り組み

「設計・製造段階」はプラスチック製品を製造する事業者が主な対象です。

製品を製造する際に、できるだけプラスチックの使用量を少なくしたり、包装を簡素化したり、分解・分別がしやすい設計にすることが求められます。素材も、プラスチックの中でも再生利用が可能な種類を使用したり、再生プラスチックやバイオプラスチックを使用したりすることが求められます。そもそも木や紙など、プラスチック以外の製品に代替することも推奨されます。こうした内容が環境省ホームページの「プラスチック使用製品設計指針」に定められています。

基準に適合すれば、優れた設計であるとして主務大臣の認定を受けることができます。この認定は、なにか法的な特例が受けられるものではなく、基本的に純粋な企業PRとして活用されるようです。

販売・提供段階の取り組み

「販売・提供段階」では、主に「特定プラスチック使用製品」に関する規定があります。
特定プラスチック使用製品とは、ストローやスプーンなど、食品販売に付属するようなものや、ホテルのアメニティとして使われる歯ブラシやヘアブラシ、クリーニング店で提供されるハンガーや衣類カバー等を指します。従来は無料で提供され、使い捨てられるプラスチック製品です。いわゆるワンウェイプラスチックなどです。


出典:環境省ホームページ

提供事業者・多量提供事業者が取り組むべきこと

これらの製品を提供する事業者は「特定プラスチック使用製品提供事業者」と呼ばれます。
さらに、法人として年間5t以上を提供する事業者は、「特定プラスチック使用製品多量提供事業者」となります。対象となる事業者は、多量であるかどうかに関わらず、下記の取り組みが求められます。

1.目標の設定
2.特定プラスチック使用製品の使用の合理化
3.情報の提供
4.体制の整備等
5.安全性等の配慮
6.特定プラスチック使用製品の使用の合理化の実施状況の把握等
7.関係者との連携
8.本部・加盟者における特定プラスチック使用製品の使用の合理化
9.約款の定め

項目は多いですが、特に重要なのは「1.目標の設定」と「6.特定プラスチック使用製品の使用の合理化の実施状況の把握等」と思われます。表のように、特定プラスチックの使用について目標を設定し、公表する必要があります。その取組内容や結果などについても、インターネット等の媒体で公表します。


出典:環境省ホームページ

これらは、産業廃棄物の多量排出事業者報告のように、行政への報告書提出ではなく、あくまで自主的な取り組みとその内容の公表です。法の目的としては、各企業が取り組みを公表することによって、自発的に廃プラスチック使用の合理化が進む効果を狙っていると考えられます。
ちなみに、上記8の加盟店はフランチャイズチェーンを指し、9の約款もフランチャイズ契約の約款を指しています。

設定する目標は「○年で□□%以上」などという法で決められた具体的な基準はありません。あくまで自主的な取り組みとしている以上、どのような目標を掲げるのかは各事業者に任されています。
しかし、実績を公表している手前、改善なしや悪化傾向であることを公表するのは憚られます。

さらに取り組みに関して、必要な場合には行政から指導及び助言が行われます。さらに、多量事業者に対しては、取り組みが著しく不十分な場合に、勧告・公表・命令等が行われます。取り組みを行わないことによる罰則はありませんが、最終的に命令に従わない場合には50万円の罰金を課せられる場合がありますので、多量事業者にとっては実質的には義務を考えて良いでしょう。

プラスチックを製造・販売する段階で、毎年目標を定めての削減は、廃プラスチックの排出事業者…いわば下流工程だけでなく、上流工程も巻き込んだ取り組みを促す狙いがあると考えられます。

 

Takeshi Sato 環境情報ソリューショングループ マネージャー

セミナーインストラクターとして、数々のセミナーを担当。オンラインセミナーの実施やeラーニングシステムを使った動画コンテンツの制作にも注力する。コンテンツの企画から講師までを一貫して手掛け、通年80回以上の講師実績を持つ。 また、イーバリューの法令判断担当として、クライアントの法解釈に関する質問や相談に対応。対応件数は年間約1,000件に上る。法令知識だけでなく、省庁や管轄自治体等の行政への聞き取り調査も日常的に行っており、効果的な行政対応のノウハウを持つ。