ダイコー事件 愛知県の撤去作業に疑問

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ダイコー事件 愛知県の撤去作業に疑問

※2016年7月4日執筆時点の情報です。

多くの食品会社から廃棄食品の引渡を受け、適正に処理せず横流しを行ったとされるダイコーの廃棄食品横流し事件。ご存知の方も多いと思いますが、ダイコーの事業場に残った廃棄物の撤去が、6月8日から愛知県主導で始まっています。

今回は、撤去作業に伴う愛知県の対応について、覚えた違和感を皆さまにお伝えできればと思います。

▼愛知県の発表資料は以下からご確認ください。(画像をクリックで全文を表示)
ダイコー株式会社に保管されている廃棄物の撤去について

ダイコー撤去作業の2つの特徴

一部テレビニュースでも取り上げられましたが、扱っている物が食品のため、誰も管理しなくなってしまった現場では、それはそれは酷い臭気が充満しているそうです。

近隣住民も大変迷惑を被り、一刻も早い対策を切望されていました。そこで今回の撤去作業が始まったようです。
さて、この撤去作業には大きな特徴的が2つあります。

撤去作業の位置づけを、民法第697条に基づく「事務管理」としている点と、近隣許可業者の無償協力に頼っている点です。

撤去作業の費用を愛知県が負担”事務管理”

まず、撤去作業の位置づけです。

不法投棄や不適正処理事件(横流しがこれに該当するかはひとまず置いておきます。)が発覚した際には、通常「措置命令」によって関係者(不法投棄した者や関係する排出事業者)に撤去させるか、「行政代執行」として自治体主導で撤去をしたのちに、関係者に費用負担を求めることになります。

しかし、今回はこれらの対応ではなく、「事務管理」として、行政が費用負担をして回収しています。

撤去作業の位置づけ・無償委託記事

この件について、愛知県の大村知事は自身のTwitterでこのようなコメントを発信しています。

「県が撤去する方法には、廃棄物処理法に基づく行政代執行がありますが、行政代執行ではダイコーに対する措置命令の手続きなどに相当の時間を要することや、悪臭等の発生だけでは行政代執行の対象とすることが難しいことから、今回は、民法に基づく「事務管理」による撤退としました。」

2016年6月1日 大村知事のTwitterより引用

ようするに、正攻法(措置命令・行政代執行)を取っていたら時間がものすごくかかってしまうから、仕方がなく例外的に対応したということです。

食品廃棄物は短期間で腐敗し、その悪臭が近隣の生活環境を悪化させますから、素早く手続きが終わる方法=事務管理を選択する必要があったのです。

そもそも”事務管理”とは?

「事務管理」とは、「義務なく他人のために事務の管理を始めた者は、その事務の性質に従い、最も本人の利益に適合する方法によって、その事務の管理をしなければならない。」と条文に示されています。

簡単に言えば、「首を突っ込んだことには、義務が無くても最後までやり通すこと」ということです。

県はこの事件に関して、関わった排出事業者を調べ自主撤去要請等をしていますから、例え義務がなくとも、最終的な撤去完了までこぎつけなければならないということでしょう。

廃棄物を”無償で”処理委託ってアリ?

今回の撤去作業のもう1つの大きな特徴は、運搬・処分会社の無償協力です。そして、私が違和感を覚えるのもこの点です。

ダイコー事件の廃棄物の撤去を行うには、本来2億円超の費用が掛かると言われていました。”事務管理”ですので、行政が負担する金額です。しかし、今回の予算は約4千万円。

残りはどうするかというと、近隣の収集運搬会社、処分会社が無償協力してくれるというのです。

「善意での協力。税金の投入が最低限に収まって素晴らしい!」という声も聞こえてきそうですが、個人的には手放しで喜べません。

廃掃法19条の6 適正な対価の負担

皆さんは、廃掃法19条の6という条文をご存知でしょうか?

廃掃法19条の6・無償委託

排出事業者は、不法投棄や不適正処理が起こった時に、きちんと処理会社に必要な料金をお支払いしていないと、措置命令を受けて支障の除去をしなければならなくなってしまうのです。

しかし、今回愛知県は複数の処理会社に無償で協力してもらうそうです。

無償協力をする許可業者さんは、どこも大手の会社なので、安心して良いとは思います。

でも、もし万が一、本件において更なる不適正処理が行われた場合、どうなるのでしょうか?

適正処理のために必要な料金の負担

私は、19条の6を「廃棄物の処理に対して、無理なコストダウンを要求すると、業者さんが利益確保のために処理コストの部分を削ってしまい、本来行われるべき処理ができない。その結果、不適正処理に至る。だから、排出事業者には、適正処理のために必要な料金を負担させなければならない」という理由で設けられている条文だと、個人的に思っております。

この理屈は、行政からの要請で処理をする場合であっても例外にはならないと思うのですが、どうなんでしょうか?

再度申し上げますが、本件の処理はもちろん適正に行われると信じております。そのため、無償協力した会社が利益が確保できずに不適正処理…などという事態は、あり得ないとは思っています。

ただ、日頃、排出事業者の皆さまに「適正処理のために、適正な対価を負担してください」「買い叩きはリスクが高い!」とお伝えしている立場ですと、どうしても気になってしまうのです。

自主回収企業の公表

それはそうと、行政の撤去が始まる前に回収を行った排出事業者さんの情報は公開されないのでしょうか?

事件発覚時は、報道や行政HPなどで、大々的に「○○社のこの商品が横流し品の疑いあり」と公開されていました。

決してイメージの良いものではない情報が大量に行きかったのですが、その後の回収を素早く行った一部企業の姿勢については、なかなか耳に入ってきません。

弊社のクライアント様にも、迅速に自主撤去をされたところがありますので、「良い部分もちゃんと伝えて欲しい」と思ってしまいます。


参考引用サイト:愛知県HPダイコー株式会社に保管されている廃棄物の撤去について

Takeshi Sato 環境情報ソリューショングループ マネージャー

コンサルタントとしての活動で実績を積む傍ら、セミナーインストラクターとして数々のセミナーを担当。コンテンツの企画から講師までを一貫して手掛け、通年80回以上の講師実績を持つ。また、イーバリューの法令判断担当として、クライアントの法解釈に関する質問や相談に対応。 対応件数は年間約1,000件に上る。法令知識だけでなく、省庁や管轄自治体等の行政への聞き取り調査も日常的に行っており、効果的な行政対応のノウハウを持つ。