廃掃法改正、隠れた“厳格化”の動き

廃掃法改正、隠れた“厳格化”の動き

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廃掃法改正、隠れた“厳格化”の動き

法律が改正された際は、改正内容だけでなく改正法案が作成される過程にも注目してみると新しく見えてくるものがあります。今回のコラムでは、改正法案の作成過程に焦点を当てて、廃掃法の厳格化について解説します。

法規制の運用が厳格化

こんなニュースをご存知でしょうか?

2016年9月、山口県で産業廃棄物収集運搬業の許可を持つ業者が、廃掃法違反で許可取消処分となりました。

県が公表した処分理由は、「木くずを少なくとも18.77キログラム投棄」「適正な焼却設備を用いずに、一般廃棄物である弁当ガラ及びティッシュペーパーを約80グラム焼却」といったもので、両方とも業者自身の事業場内における行為でした。この80グラムの廃棄物とは、道端のゴミ拾いをすればすぐに集まるわずかな量です。

このような今までになかった厳密な取り締まりが、昨年から増えていると感じます。明確なデータがあるわけではないのですが、急激に厳格化しているという声もよく耳にします。

取り締まり厳格化の契機になった事件

では、なぜ取り締まりが厳格化しているのでしょうか?
私はある重大な事件がきっかけで、行政の意識が変わり、厳格化され始めたと考えています。

その事件とは、2016年1月に発覚した食品廃棄物不正転売事件です。

環境省は2017年6月に「食品廃棄物の不正転売事案について(総括)」を発表しました。1年半の期間を経てようやく、振り返りができるレベルに事態が落ち着いてきたということでしょう。

しかし専門的な視点に立ってみると、法制度に関わるものを含む様々な問題が表出した事件であり、今後の廃棄物管理の在り方を考えねばならないレベルの事例として、取り扱うべきだと思います。

詳しくは『ダイコー事件 愛知県の撤去作業に疑問』で解説しております。

改正の過程に注目してみる

この不正転売事件が、廃棄物管理の在り方に関して多くの議論を生んだことは間違いありません。

先日改正された改正廃掃法でも、上記事例を踏まえ、電子マニフェストの一部義務化や、許可取消後でも廃棄物不適正保管に対して措置命令ができるようになったという内容が盛り込まれました。

ここで「思ったほど大きな改正にはならなかった」、「自社への影響が少なくてホッとした」と思われた排出事業者様、お気を付けください。

2016年12月15日、法改正案作成に関する検討結果を取りまとめた廃棄物処理制度専門委員会報告書の中には「行政処分の対象を拡大するなど、強化してきた規制の実効性をさらに高めることにより、権限を有する地方自治体が可能な限り迅速かつ適切に対処できる仕組みとする」「都道府県による事業者に対する監視体制の強化を通じた透明性と信頼性の強化」といった記述があります。

特に「強化してきた規制の実効性をさらに高める」という点がポイントです。私はこの一文を「現行法の取り締まりを厳格化する」とも読み替えられると考えています。

よって、冒頭でご紹介したような事件でも、行政処分の対象になってしまう傾向が出てきていると考えます。

改正内容の字面だけで見ていると気が付かないかもしれませんが、現在も廃掃法の規制はさらに厳格化しつつあり、行政指導や行政処分が益々増える可能性が高いと思っておくことが必要です。

以上のように、近年、廃掃法は厳格化してきています。
改正内容だけではなく、改正法案が作成される過程にも注目すると、なかなか安心はできない状況を読み解くことができます。
皆さんもぜひ、改正過程に注目してみてください。

Takeshi Sato 環境情報ソリューショングループ マネージャー

セミナーインストラクターとして、数々のセミナーを担当。オンラインセミナーの実施やeラーニングシステムを使った動画コンテンツの制作にも注力する。コンテンツの企画から講師までを一貫して手掛け、通年80回以上の講師実績を持つ。 また、イーバリューの法令判断担当として、クライアントの法解釈に関する質問や相談に対応。対応件数は年間約1,000件に上る。法令知識だけでなく、省庁や管轄自治体等の行政への聞き取り調査も日常的に行っており、効果的な行政対応のノウハウを持つ。