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産業廃棄物の委託先への実地確認は義務なのか──処理状況確認の努力義務と不適正処理リスクへの備え

基準時点:2026年7月現在(最終更新:2026年8月25日)

産業廃棄物の処理を委託したあと、その委託先が実際にどう処理しているかを、現地まで足を運んで確かめる義務はあるのでしょうか。「訪問しなければ違反になるのか」と迷う排出事業者は少なくなく、国の廃掃法と自治体の条例とで扱いが異なる点も判断を難しくしています。
本記事では、委託先の処理状況の確認が廃掃法上どう位置づけられるのか、自治体で扱いがどう違うのか、確認を怠るとどのようなリスクがあるのかを、条文と過去の不法投棄事例から整理します。

結論
産業廃棄物の処理を委託する排出事業者が委託先の処理状況を確認することは、廃棄物処理法(廃掃法)上の「努力義務」です。根拠は廃掃法第12条第7項および第12条の2第7項で、平成22年(2010年)の改正で追加され、平成23年(2011年)4月1日から施行されています。
罰則のない努力義務であり、確認の方法も現地訪問に限られず、委託先の適正処理を実質的に確認できる場合には、デジタル技術を用いた確認も認められています。
ただし、自治体によっては条例・規則等で実地確認を「義務」として課している場合があるため、自社の排出事業場がある自治体の規定を確認する必要があります。
過去の大規模な不法投棄事件では、委託先の不適正処理が排出事業者への責任追及(措置命令・原状回復費用の拠出)につながった例もあり、委託先の状況を確認しておくことは、こうしたリスクへの備えとして有効です。

この記事で分かること

  • 委託先の処理状況確認が廃掃法第12条第7項・第12条の2第7項の努力義務である位置づけと、罰則の有無
  • 現地訪問に限らない確認方法(デジタル技術の活用)と、実質的な確認が認められる範囲の考え方
  • 自治体の条例・規則・指導要綱等で実地確認等について独自の定めを置く自治体があること(当社の確認では37自治体)と、管轄自治体の規定を確認する必要性
  • 青森・岩手県境の不法投棄事件に見る、委託先の不適正処理が排出事業者に及ぶ責任リスク(措置命令・原状回復費用の拠出)
  • 不適正処理につながる「オーバーフロー」の仕組みと、パンフレットやHPだけでは分からない実地確認の価値

委託先への実地確認は義務なのか──廃掃法上の位置づけ

排出事業者による委託先の処理状況の確認は、廃掃法上「努力義務」として定められています。平成22年(2010年)の改正廃棄物処理法で追加され、平成23年(2011年)4月1日から施行されました。条文は次のとおりです。

事業者は、前二項の規定によりその産業廃棄物の運搬又は処分を委託する場合には、当該産業廃棄物の処理の状況に関する確認を行い、当該産業廃棄物について発生から最終処分が終了するまでの一連の処理の行程における処理が適正に行われるために必要な措置を講ずるように努めなければならない。

※廃棄物処理法第12条第7項および第12条の2第7項

この規定には罰則がないため、法律上は「努力義務」と位置づけられています。もっとも、確認の対象は「処理の状況」であり、現地への訪問だけが唯一の方法とされているわけではありません。委託先で処理が適正に行われていることを実質的に確認できると認められるのであれば、実地調査に限らず、デジタル技術を活用して確認することも可能とされています(環境省の令和5年(2023年)3月31日通知)。

ただし、これはあくまで法律(国の廃掃法)上の扱いです。次に述べるとおり、自治体によっては条例や要綱で実地確認そのものを「義務」として課している場合があるため、自社の排出事業場がある自治体の規定を確認する必要があります。

自治体によっては「義務」──排出事業場のある自治体の規定を必ず確認する

国の廃掃法では努力義務にとどまりますが、自治体によっては条例・規則等により、実地確認や処理状況の確認を求めている場合があります。対象となる事業者、確認方法、頻度、記録の保存期間などは自治体ごとに異なります。当社が毎年実施している全国の条例・規則等の確認(令和8年4月1日時点、都道府県・政令指定都市・中核市を対象)では、37の自治体が、条例・規則・指導要綱等により、委託先の実地確認や処理状況・処理能力の確認について独自の定めを置いています。このうち、条例で確認の実施と記録の5年間保存までを義務付けている自治体もあれば、指導要綱により契約前の確認を求める自治体、努力義務として定める自治体もあり、規定の内容や強さは自治体ごとに異なります。例えば愛知県では、条例により委託前の確認と委託中の定期確認が義務付けられています(詳細は別記事で解説)。自社の排出事業場がある自治体の規定をご存じない場合は、早急に確認することをおすすめします。

たとえば、記録の作成とその5年間保存を求める自治体もあれば、不適正処理に気づいた際の搬入停止や知事への報告を求める自治体もあります。基準日時点の最新の規定名・条項は、必ず管轄の自治体の公表資料でご確認ください。

委託先の不適正処理が排出事業者に及んだ不法投棄事例とは

委託先の不適正処理が、排出事業者への責任追及につながった代表例が、青森県と岩手県の県境で起きた大規模な不法投棄事件です。平成11年(1999年)に発覚したこの事件では、投棄された廃棄物から約12,000社の排出事業者が特定されました。このうち一部の事業者には廃棄物を撤去する措置命令が出され、そのほかにも原状回復費用の拠出を求められた事業者があります。排出事業者にも措置命令や費用負担が及ぶ場合があり、法令対応や企業の信用に影響する可能性があります。

廃棄物の全量撤去は、両県とも2013年度(平成25年度)に完了しています。ただし、撤去後も地下水・土壌の汚染対策などの事業は継続しており、原状回復には長い年月と多額の費用がかかっています。委託先で不適正処理が起きれば、その影響が排出事業者に及ぶまでの期間は非常に長くなり得ることを示す事例です。

拠出額が1,000万円を超えた排出事業者による費用拠出の例

この事件では、原状回復費用として1,000万円を超える費用拠出を行った排出事業者もありました。なお、これは行政による撤去の措置命令額ではなく、費用拠出の申出(自主撤去・費用拠出)の例です。以下は青森県県境再生対策室が公表した資料にもとづく一例です。

申出了承日

業種(所在)

廃棄物の内容

拠出額

平成17年10月5日

精密機器器具製造業(東京都)

汚泥及び燃え殻 2574.778 t

45,147,000円

平成18年11月15日

非鉄金属製造業(東京都)

汚泥等 3424.659 t

68,001,742円

平成19年4月17日

輸送用機械器具製造業(東京都)

廃プラスチック類等 798.2 t

31,698,917円

平成19年12月18日

化学工業(東京都)

汚泥等 553.58 t

10,341,030円

平成20年2月12日

廃棄物処理業(東京都)

廃プラスチック類等 1745.2925 t

65,205,874円

※上記の事業者は一例です。出所:青森県県境再生対策室公表資料(平成20年7月10日現在)をもとに作成。措置命令額ではなく、費用拠出の申出の例です。

不法投棄・不適正処理につながる「オーバーフロー」とは

処理能力を超える廃棄物の受入れは、不適正処理につながり得るリスク要因の一つです。このような状態を、ここでは「オーバーフロー」と呼びます。

処理能力を超えて受け入れると、処理が間に合わなくなったり、本来必要な処理ができず、コストに見合う残さの処分先が確保できなくなったりします。その結果、不適正処理や不法投棄につながることがあります。こうした事態を防ぐには、委託前の確認はもちろん、委託契約締結後も定期的に委託先を確認し、委託先に適正な処理能力・管理体制があるか、自社が委託する廃棄物が適正に処理される流れになっているかを確認しておくことが重要です。

インターネットやパンフレットではなく”実地”で確認する意味は何か

「処理施設は遠方で、時間も費用もかかる」「HPや産廃ネット等で情報収集し、パンフレットを郵送してもらえれば確認できるのでは」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。インターネットやパンフレット等の情報も、確かに有効な確認手段です。

しかし、実際に自分の目で確認するからこそ分かることもあります。これまでに寄せられたご相談を踏まえ、実地確認の際に特に確認しておきたいポイントをご紹介します。

確認の観点

チェックしたいポイントの例

施設の管理

施設の老朽化、夜間・早朝の運転、煙害・臭気・悪臭等の問題、技術者・責任者の不在 等

車両の出入り

施設の能力と比した車両の出入り、夜間の車輌の出入り、不審な車両の出入り 等

廃棄物等の保管状況

廃棄物等の大量保管、その急増・急減 等

その他

最終処分場を有している場合は最終処分場の残余容量。中間処理場・積替保管場を有している場合は、未分別の廃棄物等の大量保管、他社の車輌の出入り、無許可施設(焼却炉・破砕機等)の有無。一般廃棄物処理業を兼業している場合は、一廃と産廃の混合処理 等

パンフレットや許可証、HP等からは分からないこれらの情報を得られる点が、実地確認の価値です。実地確認は、不適正処理の兆候を早期に把握し、リスクを低減するための有効な手段です。実地確認で特に見ておきたい観点は、実地確認の3つのポイントの記事でも解説しています。

「委託先が遠方で自社では確認しきれない」「何を見ればよいか分からない」といった場合、自治体の規定にも対応した実地確認の代行や、確認ポイントの整理について、イーバリューにご相談いただけます。

よくある質問(FAQ)

Q. 委託先への実地確認は法律上の義務ですか?
A. 廃掃法が努力義務として定めているのは、委託先の「処理の状況の確認」と、適正処理のために必要な措置を講ずることです。実地訪問そのものが一律に求められているわけではありません。根拠は第12条第7項および第12条の2第7項で、平成22年(2010年)改正・平成23年(2011年)4月1日施行により定められました。罰則はありません。ただし、自治体の条例等で実地確認が義務付けられている場合があるため、自社の排出事業場がある自治体の規定を確認する必要があります。

Q. 実地確認は、必ず現地に行かなければならないのですか?
A. 廃掃法の努力義務が求めているのは「処理の状況の確認」であり、現地訪問だけが唯一の方法とされているわけではありません。委託先で処理が適正に行われていることを実質的に確認できると認められるのであれば、実地調査に限らず、デジタル技術を活用した確認も可能とされています。ただし、自治体の条例で実地確認そのものを義務付けている場合は、その規定に従う必要があります。

Q. 委託先が不適正処理をしていた場合、委託した排出事業者にも責任は及びますか?
A. 及ぶ可能性があります。過去の県境不法投棄事件では、廃棄物から特定された約12,000社の排出事業者のうち、一部に廃棄物を撤去する措置命令が出され、そのほかにも原状回復費用の拠出を求められた事業者がありました。委託先の確認を怠らないことが、こうしたリスクを避けるうえで重要です。実際に責任が及ぶかどうかは、廃棄物処理法上の要件や個別の委託状況などにより判断されます。

Q. 実地確認では、具体的に何を見ればよいのですか?
A. 施設の管理状況(老朽化、悪臭、責任者の不在など)、車両の出入り(施設能力と比べた台数、不審な車両の有無)、廃棄物の保管状況(大量保管や急な増減)などが確認の観点です。最終処分場を持つ施設では残余容量、中間処理場では未分別の廃棄物の大量保管や無許可施設の有無なども確認したいポイントです。パンフレットや許可証だけでは分からない実態が見えることが、実地確認の意味です。

Q. 自治体ごとの規定は、どこで確認できますか?
A. 当社の確認(令和8年4月1日時点)では、都道府県・政令指定都市・中核市のうち37の自治体が実地確認等について独自の定めを置いています。各自治体が公表している産業廃棄物に関する条例・要綱や、廃棄物処理の手引きなどで確認できます。義務・努力義務の別や、記録の保存年数(例:5年間)などは自治体によって異なり、改正されることもあります。最新の内容は、自社の排出事業場を管轄する自治体に直接お問い合わせください。

参考資料

・廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)第12条第7項・第12条の2第7項
・環境省 令和5年(2023年)3月31日通知(委託先の処理状況の確認方法に関するもの)
・青森県県境再生対策室公表資料(平成20年7月10日現在)
・青森県『青森・岩手県境不法投棄事案アーカイブ』(県公式サイト)
・イーバリュー株式会社『【実地確認】排出事業場の自治体における条例等』(令和8年4月1日時点・当社作成)

 

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Takeshi Sato

環境コンサルティング事業部

チーフマネージャー

セミナーインストラクターとして、数々のセミナーを担当。オンラインセミナーの実施やeラーニングシステムを使った動画コンテンツの制作にも注力する。コンテンツの企画から講師までを一貫して手掛け、通年80回以上の講師実績を持つ。また、イーバリューの法令判断担当として、クライアントの法解釈に関する質問や相談に対応。対応件数は年間約1,000件に上る。法令知識だけでなく、省庁や管轄自治体等の行政への聞き取り調査も日常的に行っており、効果的な行政対応のノウハウを持つ。

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