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「0円有価物」とは何なのか ~“タダで引き取ってもらえる”は、廃棄物ではないのか?~

産業廃棄物の実務に携わっていると「0円有価物」という言葉を耳にすることがあります。これは、無償譲渡など実質的に金銭のやりとりがない取引を指す場合が多く「処理費用が発生していないので廃棄物ではない」と理解されていることが多いです。
一見もっともらしく聞こえますが、結論から言えばこの理解は明確に誤りです。そしてこの誤解が、知らないうちに法令違反につながってしまうことがあります。

本コラムでは「0円有価物」とは何なのか、そして実務的にどのような対応をすべきかを、現場視点で整理していきます。

よくある誤解が生まれやすい事例

では実際に「0円有価物」という言葉が使われる事例をみていきます。現場で特に多いのは、処理業者から次のような提案を受けるケースです。
たとえば、工場内にある設備を処分するため、業者に見積もりを依頼したとします。設備には金属やプラスチックなど複数の素材が含まれており、本来は処理をするのに費用が発生するのが一般的です。

ところが、見積もりを依頼した際に、次のように言われることがあります。
「運搬費はこちらで負担します(もしくは自社で引き取りに行きます)ので、物は無償で引き取らせてください」
排出事業者からすると、これは非常に魅力的な提案です。

・処分費がかからない
・運搬費も不要
・金銭のやり取りがない

この条件が揃うと、現場の感覚としてはどうしても「処理費用がかかっていないなら、廃棄物に該当しないのではないか」という発想になってしまいます。しかし、この「都合のよさを先行した取引」をしてしまうと、後になって大きな問題に発展してしまう可能性があるのです。

そもそも「0円で有価」といえるのか

ここで、一度立ち止まって考えるべきポイントがあります。それはシンプルに、次の問いです。

「0円は、有価物といえるのか?」

「0円有価物」という言葉が使われていますが、冷静に言葉の意味を分解すると、ここには大きな矛盾が存在しています。なぜなら「有価」とは「価値が有る」という意味であるのに対し「0円」は価値がないという意味だからです。法令や行政の解釈を見ても、本来、有価物とは「物そのものに価値があり、対価として金銭が支払われる状態」を指します。
しかし、取引金額が0円ということは「物の価値に対して、対価が支払われていない状態」であり、有価物として成立しているとはいえないことになります。そのため、前述の事例は原則として廃棄物として扱うべき取引です。
リサイクル業者が運搬費を負担していたとしても、それだけで有価物や有償譲渡に該当することはありません。

「0円有価物」の構造

ここで改めて「0円有価物」と呼ばれるものの実態を整理してみます。
現場で「0円有価物」と呼ばれるケースは、多くの場合、

・排出物そのものに多少の価値がある
・しかし、運搬や取扱いなどにコストがかかる
・その結果、差し引きがゼロになる

という、価値とコストが相殺された結果として0円になっている状態です。これを整理すると、次の関係になります。

排出物(価値)- 作業・サービス(コスト)= 0円

「0円」というのは、排出側の立場から見れば
・利益が出ているわけではない
・価値が明確に成立しているわけでもない
・たまたま収支が釣り合っただけ
という状況に過ぎません。
この意味で「0円有価物」という言葉は「有価」という言葉が本来持つ意味と、実態が一致していないのです。

構造は「到着時有価物(逆有償)」と同じ

実は、この状態は到着時有価物(逆有償)などと呼ばれるものと同じ構造です。それでは、この「到着時有価物」の対応方法はどのようにしたらよいのでしょうか。

環廃産発第130329111号には下記の記載があります。

産業廃棄物の占有者(排出事業者等)がその産業廃棄物を、再生利用又は電気、熱若しくはガスのエネルギー源として利用するために有償で譲り受ける者へ引渡す場合においては、引渡し側が輸送費を負担し、当該輸送費が売却代金を上回る場合等当該産業廃棄物の引渡しに係る事業全体において引渡し側に経済的損失が生じている場合であっても、少なくとも、再生利用又はエネルギー源として利用するために有償で譲り受ける者が占有者となった時点以降については、廃棄物に該当しないと判断しても差し支えないこと。

この内容をまとめると「売却で得られる利益よりもコストの方が上回り、引き渡す側が経済的にマイナスになっている場合は、完全な有価物とはいえないが、運搬が終了するまでは廃棄物として扱い、引き取り先に到着したタイミングからは有価物として扱ってよい」という意味になります。
通常の到着時有価物は、差し引きがマイナスになるため分かりやすいですが「0円有価物」は差し引きが0なので、それが見えにくくなっているだけとなります。
つまり「運搬費用が売却代金を上回る、もしくは同等の金額であったとしても、有償で譲り受ける側の物となった時点で有価物として扱っても問題ない」ということです。

注意点としては、運搬が終了するまでは廃棄物として扱う必要がある点です。紙マニフェストの場合はB2票まで、電子マニフェストの場合は運搬終了報告まで運用する必要があります。

運用方法の詳細はこちらのコラムをご確認ください。
https://www.env-value.co.jp/column/manifesto/press12

0円有価物をどう取り扱うべきか

「0円有価物」と称されるケースは、到着時有価物と同じ構造であるにもかかわらず、価値とコストが相殺されて金額が0円になるため、実態が見えにくくなっているだけというものです。
したがって「0円だから廃棄物ではない」という判断ではなく、本来は「運搬終了までは廃棄物」であり、産業廃棄物収集運搬委託契約書の締結や、マニフェストの交付が必要という認識を持っておくことが重要です。
有価物だと誤解してしまうと、産業廃棄物の運搬を委託しているのに「収集運搬委託契約を締結していない、マニフェストも発行していない」といった状態に陥り、後から重大な法令違反が発覚するリスクがあります。
現場で「0円有価物」という言葉を聞いた際は、必ず取引の実態を確認し、適切な対応ができるようにしておきましょう。

Tomoya Furuhashi

環境コンサルティング事業部にて、法令実務の相談窓口として、クライアントからの行政提出書類や法令に関する質問対応などを担当。法制度の解釈や運用に関する実務的な助言を通じて、現場での対応力向上を支援している。また、廃棄物管理監査サービスにおいては監査員として全国の排出事業者・処理業者を訪問。帳票類や管理体制の運用状況を確認し、コンプライアンスの観点から現場の評価と改善提案を行うことで、適正処理とリスク低減に寄与している。

Tomoya Furuhashi