廃棄物管理を外部委託するメリットと注意点
基準時点:令和8年8月現在(最終更新:令和8年8月26日) 廃棄物管理の担当者は...
コラム
基準時点:令和8年8月現在(最終更新:令和8年8月26日)
廃棄物管理業務の外部委託では「何を委託するか」と同時に「どれから委託するか」が問題になります。多量排出事業者の場合、この順序を間違えると、外部に委託しても管理担当者の負荷は思ったほど下がりません。先に切り出すべき業務と社内に残すべき業務を整理します。
結論
多量排出事業者が最初に外部へ切り出すべきなのは「一定の知識が必要なルーチン業務」です。マニフェストの交付、電子マニフェストの登録内容の確認、運搬・処分終了報告の記載内容の確認、契約品目との突合などが該当します。
多量排出事業者には、産業廃棄物処理計画書の提出と、その実施状況の報告が義務づけられ(廃棄物処理法第12条第9項・第10項、特別管理産業廃棄物は第12条の2第10項・第11項)、その内容はインターネットで公表されます。排出量削減や再生利用率(リサイクル率)の向上といった改善業務は、製造プロセスや工程別の排出データを扱うため、社内に残すべき領域です。順序を逆にすると、管理担当者の時間がルーチン業務に取られ続け、処理計画目標への対応等が後回しになります。
前回のコラムでは、廃棄物管理の事務作業は外部に委託できる一方、排出事業者としての責任は移せないこと、だからこそ委託先の見極めが欠かせないことを整理しました。今回はその続きとして、多量排出事業者が「どの業務から先に外部へ切り出すべきか」を考えます。
多量排出事業者とは、前年度の産業廃棄物の発生量が1,000トン以上(特別管理産業廃棄物は50トン以上)である事業場を設置している事業者を指します。
該当する事業者は、その年度の減量等に係る産業廃棄物処理計画書を作成し、6月30日までに都道府県知事等へ提出しなければなりません(産業廃棄物は廃棄物処理法第12条第9項、特別管理産業廃棄物は同法第12条の2第10項)。前年度に計画書を提出した事業者は、その実施状況を同じく6月30日までに報告します(産業廃棄物は同法第12条第10項、特別管理産業廃棄物は同法第12条の2第11項)。
そして、提出された処理計画書と実施状況報告書は、都道府県知事等によりインターネットで公表されます(産業廃棄物は同法第12条第11項、特別管理産業廃棄物は同法第12条の2第12項)。
多量排出事業者にとって、排出量の削減や再生利用率の向上に向けた取組は、単なる社内目標にとどまりません。行政(自治体)へ処理計画として提出し、実施状況を報告し、その結果が外部から見える——そういう業務です。
多量排出事業者では、大規模な工場で特定の品目が継続的に発生する事業場が少なくありません。
その結果、マニフェストの交付や登録内容の確認・終了報告の確認は、ほぼ同じ手順を日々繰り返す業務になります。いわゆるルーチン業務です。
ところが、完全なルーチンとは言い切れません。手順どおりの日が続く一方で、稀にイレギュラーが紛れ込みます。しかも一定の知識がなければ、そのイレギュラーに気づくことができません。
たとえば、次のようなことが起こります。
どちらも、手順書のとおりに作業していたにもかかわらず起きたミスです。つまり問題は、手順を守ったかどうかではなく、目の前の情報を見て「いつもと違う」と気づけたかどうかにあります。
この構造があるため「十分な知識がないまま手順どおりに進めてもらう」という選択が取りにくくなります。
選択が取れないと、知識のある管理担当者が、ルーチン業務そのものを直接抱えることになります。多量排出事業者において、これは最も避けたい状態です。
本来は改善業務に充てるべき管理担当者の時間が、一定以上の知識を必要とするルーチン業務に侵食されていく。
しかも、この侵食は表面化しにくいものです。マニフェストは毎日きちんと回り、法令違反も起きていません。業務としては成立している——ただ、処理計画に掲げた削減目標や再生利用率向上の検討は、後回しになり続けます。
知識のない担当者には任せられず、知識のある管理担当者は自分で抱えるしかない——この八方ふさがりを崩すには、任せる相手を社内から社外へ広げるしかありません。
ここまでを踏まえると、優先順位は明確になります。先に外部へ切り出すのは「一定の知識が必要なルーチン業務」です。
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先に外部へ切り出す:知識が必要なルーチン業務 |
社内に残す:製造プロセスに踏み込む改善業務 |
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マニフェストの交付・電子マニフェストの登録内容の確認 |
排出量削減の目標設定と工程別の要因分析 |
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運搬・処分終了報告の記載内容の確認 |
再生利用率向上に向けた分別方法・処理ルートの見直し |
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委託契約の品目と実際の排出品目の突合 |
材料変更・工程変更が排出量に与える影響の評価 |
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許可証の有効期限・許可品目の管理 |
処理計画書・実施状況報告書に記載する内容の決定 |
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拠点別・品目別の実績集計 |
製造・購買部門との社内調整 |
表1:先に外部へ切り出す業務と、社内に残す業務の比較
改善業務を社内に残す理由は、製造プロセスや廃棄物の詳細情報を扱うためです。どの工程からどの品目がどれだけ出ているのか、材料や工程の変更が排出量にどう影響するのか——こうした情報の多くは社内にしかなく、外部への丸投げはできません。外部の力を借りるとしても、専門性の高い情報のやり取りが前提になります。
一方、ルーチン業務は外部に切り出せる余地があります。求められるのが社内固有の製造情報ではなく、廃棄物処理法とマニフェスト運用の知識だからです。
ただし、切り出せる相手は「知識を持った外部」に限られます。手順どおりに作業するだけの委託先では、社内の知識のない担当者に任せたときと同じことが起こり、むしろ異常に気づく機会は減ってしまいます。
外部に委託する際に確認したいのは、次の3点です。
前回のコラムで整理したとおり、排出事業者責任は外部に移せません。外部に求めるのは判断の代行ではなく、判断すべき事象を見つけて上げてくる機能です。
多量排出事業者にとって、廃棄物管理業務を外部へ委託することは、工数を削減するための手段ではありません。管理担当者の限られた時間を、処理計画と実施状況報告を通じて外部へ公開される、改善業務へ充てるための手段です。
先に切り出すのは、知識が必要なルーチン業務。社内に残すのは、製造プロセスに踏み込む改善業務。
この順序で設計すれば、イレギュラーのリスクを抑えながら、改善に充てる時間を確保しやすくなります。逆に、切り出しやすい業務から手をつけると、知識が必要な部分だけが社内に残り、管理担当者の負荷は十分に下がりません。
Q. 多量排出事業者に該当するのは、どのような事業者ですか。
A. 前年度の産業廃棄物の発生量が1,000トン以上(特別管理産業廃棄物は50トン以上)である事業場を設置している事業者です。該当する場合、その年度の産業廃棄物処理計画書を6月30日までに都道府県知事へ提出し、前年度に計画書を提出していれば実施状況報告書も提出します。提出された内容はインターネットで公表されます。
Q. ルーチン業務を外部に委託すると、工数はどれくらい減りますか。
A. 削減幅は、委託する業務範囲、拠点数、排出品目数、社内の確認体制によって変わるため、一律には提示しかねます。検討の出発点としてまず把握したいのは、管理担当者の稼働のうち、マニフェストの交付・登録、終了報告の確認、契約突合といった定型業務が占める割合です。この割合が高いほど、切り出しによる効果は見込みやすくなります。
Q. 排出量削減や再生利用率向上の検討も外部に委託できますか。
A. 外部の知見を入れること自体は可能です。ただし、製造プロセスや工程別の排出データを扱うため、丸投げはしづらい領域です。社内の情報を出しながら一緒に検討する形になるため、まずルーチン業務を切り出して社内に検討する時間をつくることが、結果的に近道になります。
※ 本コラムは令和8年8月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。個別事案の取扱いは、所管の都道府県・政令市にご確認ください。
セミナーインストラクターとして、数々のセミナーを担当。オンラインセミナーの実施やeラーニングシステムを使った動画コンテンツの制作にも注力する。コンテンツの企画から講師までを一貫して手掛け、通年80回以上の講師実績を持つ。また、イーバリューの法令判断担当として、クライアントの法解釈に関する質問や相談に対応。対応件数は年間約1,000件に上る。法令知識だけでなく、省庁や管轄自治体等の行政への聞き取り調査も日常的に行っており、効果的な行政対応のノウハウを持つ。