廃棄物管理を外部委託するメリットと注意点
基準時点:令和8年8月現在(最終更新:令和8年8月26日) 廃棄物管理の担当者は...
コラム
産業廃棄物の処理を委託する際に交わすマニフェスト(産業廃棄物管理票)は、実務では収集運搬業者が用紙を用意し記入まで代行してくれることが多く、排出事業者が仕組みをよく知らないまま控えだけを受け取っているケースも少なくありません。しかし、その交付義務と記載内容を確認する責任を負うのは、あくまで排出事業者自身です。
この記事では、2026年7月現在の制度をもとに、マニフェストの交付義務者や7枚綴りの伝票(A〜E票)の流れを、排出事業者の視点で整理します。
結論
マニフェストの交付義務を負うのは、産業廃棄物の処理を処理業者へ委託した排出事業者です(廃棄物処理法第12条の3)。法令上の例外に該当する場合を除き原則として交付が義務づけられており、収集運搬業者が用紙の準備や記入を代行しても、交付義務と記載内容を確認する責任は排出事業者にあります。
マニフェストは、A票からE票までの伝票で運搬・処分・最終処分がそれぞれ終了したことを確認する仕組みで、交付後は各票を5年間保存し、紙マニフェストでは前年度の交付状況を毎年6月30日までに都道府県等へ報告する義務があります(電子マニフェスト利用分は免除)。不交付・未記載・虚偽記載・保存義務違反は、いずれも1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象です。
結論から言うと、マニフェストの交付義務を負うのは、産業廃棄物の処理を委託した排出事業者です。マニフェストの正式名称は「産業廃棄物管理票」で、排出事業者が廃棄物の流れ(誰が運び、どこで、どのように処理したか)を把握するための伝票です。産業廃棄物の運搬や処分を処理業者へ委託する場合、廃棄物処理法(廃掃法)は、法令上の例外に該当する場合を除き、原則としてマニフェストを交付することを排出事業者に義務づけています。
実務では、委託先の収集運搬業者があらかじめ用紙を用意し、記入まで代行して持参するケースが多く見られます。マニフェストの知識がなかったり、手書きの手間が負担になったりする排出事業者に代わって行うもので、当社の相談対応の中でも、収集運搬業者任せにしている事業者は少なくありません。
ただし、あくまで代行である点には注意が必要です。マニフェストは廃棄物の引渡しと同時に交付するものであり、収集運搬業者に用紙の準備や記入を代行してもらった場合でも、交付義務や記載内容を確認する責任を負うのは排出事業者です。記載内容に誤りがあれば、その責任は代行した業者ではなく排出事業者に及びます。
このほか、マニフェストの運用基準として、廃掃法では次のような事項が定められています。
紙マニフェストは複写式で綴られています。以下では、A票・B1票・B2票・C1票・C2票・D票・E票からなる直行用(廃棄物を積替え・保管せずに直接運ぶ場合)の7枚綴りを例に説明します。廃棄物が排出事業者から収集運搬業者、中間処理業者、最終処分業者へと移動するのに合わせて、各段階で控えや報告用の伝票が抜き取られ、排出事業者へ送付されていきます。なお、積替え・保管を伴う運搬では、B4票・B6票などを含む様式を使用します。以下、①〜⑤の流れを順に見ていきます。紙マニフェストは各都道府県の産業廃棄物協会等で購入できます。
排出事業者は、廃棄物の処理を委託する前にマニフェストを準備し、交付年月日や廃棄物の種類・数量等の必要事項を記入します。この記入済みのマニフェストが、以降の各工程で使われます。
排出事業者は、廃棄物の引渡しと同時にマニフェストを収集運搬業者へ渡します。収集運搬業者はA票を排出事業者へ返し、これが排出事業者の「交付時の控え」になります。残る6枚(B1・B2・C1・C2・D・E票)は、廃棄物とともに次の工程へ進みます。
収集運搬業者は、廃棄物を中間処理業者へ運びます。中間処理業者はB1票とB2票を収集運搬業者へ渡し、収集運搬業者はB1票を自らの控えとして保管したうえで、B2票を排出事業者へ送付します。このB2票の返送によって「運搬が終了した」ことが排出事業者へ報告されます。残る4枚(C1・C2・D・E票)は、廃棄物とともに次の工程へ進みます。
中間処理業者は、廃棄物を選別などの中間処理にかけます。処理が終わると、中間処理業者はC2票を収集運搬業者へ、D票を排出事業者へ送付し「中間処理が終了した」ことを報告します。C1票は中間処理業者の控えとなり、E票は最終処分が終わるまで中間処理業者が保管します。
最終処分業者は、処分が終了すると中間処理業者へ報告します。報告を受けた中間処理業者は、保管していたE票を排出事業者へ送付し「最終処分が終了した」ことを報告します。これで一連の流れが完了します。
①〜⑤の工程を経て、各当事者の手元には次の伝票が残ります。
これらの写しのやり取りには、制度上の期間の考え方があります。まず、収集運搬業者・処分業者は、運搬または処分が終了したときは、10日以内に該当する票(B2票・D票・E票など)の写しを排出事業者へ送付します。一方、排出事業者の側では、B2票・D票については交付日から90日以内(特別管理産業廃棄物は60日以内)、E票については180日以内に写しの送付を受けたかを確認します。これらの期間を過ぎても写しが届かない場合、排出事業者は処理状況を把握し、生活環境の保全上必要な措置を講じなければなりません。
A票(マニフェストの1枚目)には、廃掃法で定められた次の事項を記載する必要があります。実際の記入欄の位置は、各都道府県の産業廃棄物協会などが配布する様式・記入例で確認してください。
マニフェストには、紙のほかに電子マニフェスト(JWNET)があります。2020年(令和2年)4月1日から、前々年度の特別管理産業廃棄物(PCB廃棄物を除く)の発生量が年間50トン以上の事業場を設置している排出事業者は、当該事業場から生じる特別管理産業廃棄物(PCB廃棄物を除く)の処理を委託する場合、電子マニフェストの使用が義務付けられています。対象になるかは事業場ごとに判断します。なお、通信環境などの事情で電子マニフェストの登録が困難な場合には、紙マニフェストの交付が認められ、備考欄にその理由を記載する運用があります。この基準に満たない排出事業者は、紙マニフェストと電子マニフェストのいずれかを選べます。電子マニフェストを利用すると、後述の交付状況報告が不要になるなど、事務負担の軽減が期待できます。
マニフェストや処理委託に関する義務に違反した場合、廃掃法では次のような罰則が定められています。なお、下表の法定刑は、2025年(令和7年)6月1日に施行された刑法等の改正により、従来の「懲役」が「拘禁刑」に統一された後の表記です。
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違反の類型 |
法定刑(根拠条文) |
|---|---|
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許可を受けていない業者への処理委託(委託禁止違反) |
5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはこれらの併科(法第25条第1項第6号) |
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委託基準違反(委託契約書の未作成・法定記載事項の不備など) |
3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはこれらの併科(法第26条第1号) |
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マニフェスト不交付 |
1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(法第27条の2) |
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マニフェスト未記載 |
1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(法第27条の2) |
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マニフェスト虚偽記載 |
1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(法第27条の2) |
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マニフェスト保存義務違反 |
1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(法第27条の2) |
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マニフェスト確認義務違反 |
措置命令の対象(罰則ではなく措置命令) |
上記の罰則に加え、紙マニフェストには「産業廃棄物管理票交付等状況報告」の義務があります。これは、前年度のマニフェストの交付状況を、毎年6月30日までに、事業場の所在地を管轄する都道府県・政令市・中核市などへ報告書としてまとめて提出するものです。ただし、電子マニフェストを利用した分については、この報告義務は免除されます。
廃棄物を委託する際に目にするマニフェストには、法律で細かく定められた記載事項・保存義務・報告義務・罰則があります。そして、これらの責任は、代行する収集運搬業者ではなく排出事業者に課せられています。収集運搬業者に用紙の準備や記入を任せている場合でも、記載内容を確認する責任は自社にある――この点を踏まえて、今一度、自社の取扱い状況を確認してみてはいかがでしょうか。マニフェスト運用の点検や、実務で起こりやすいミスへの対策については、イーバリューにご相談いただけます。
なお応用編では、マニフェストの運用で実際に起こりやすいミスを紹介しています。
Q. マニフェストは誰が交付する義務がありますか?
A. 産業廃棄物の運搬・処分を処理業者に委託する排出事業者は、法令上の例外に該当する場合を除き、原則としてマニフェスト(産業廃棄物管理票)を交付する義務を負います(廃棄物処理法第12条の3)。実務では収集運搬業者が用紙を用意し記入を代行することが多いものの、代行してもらった場合でも、交付義務と記載内容を確認する責任は排出事業者にあります。
Q. マニフェストは何年間保存する必要がありますか?
A. A票は交付した日から、返送された各票は送付を受けた日から、それぞれ5年間保存する必要があります。あわせて、前年度の交付状況を毎年6月30日までに、事業場の所在地を管轄する都道府県・政令市・中核市などへ報告する義務がありますが、電子マニフェストを利用した分についてはこの報告が免除されます。
Q. 処理終了を知らせる管理票の写しは、いつ戻ってくる?届かない場合は?
A. 収集運搬業者・処分業者は、運搬または処分の終了後10日以内に、該当する票の写しを排出事業者へ送付します。排出事業者は、B2票・D票を交付日から90日以内(特別管理産業廃棄物は60日以内)、E票を180日以内に受け取れたかを確認し、これらの期間を過ぎても届かない場合は、処理状況を把握して生活環境の保全上必要な措置を講じなければなりません(写しの送付が受託者の10日以内の義務であるのに対し、90日・60日・180日は排出事業者の確認・措置の基準となる期間です)。
Q. 電子マニフェストの使用が義務になるのは、どのような場合ですか?
A. 前々年度の特別管理産業廃棄物(PCB廃棄物を除く)の発生量が年間50トン以上の事業場を設置している排出事業者は、当該事業場から生じる特別管理産業廃棄物の処理を委託する場合、2020年4月1日から電子マニフェストの使用が義務付けられています。対象になるかは事業場ごとに判断します。この基準に満たない場合は、紙と電子のいずれかを選べます。
Q. マニフェストを交付しなかった場合、どのような罰則がありますか?
A. マニフェストの不交付・未記載・虚偽記載・保存義務違反は、いずれも1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象です(法第27条の2)。委託に関する罰則はより重く、許可を受けていない業者への処理委託(委託禁止違反)は5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはこれらの併科(法第25条第1項第6号)、委託基準違反(委託契約書の未作成・法定記載事項の不備など)は3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはこれらの併科(法第26条第1号)が定められています。マニフェストの確認義務違反は措置命令の対象です(法定刑は2025年6月施行の刑法等改正後の「拘禁刑」表記によります)。
セミナーインストラクターとして、数々のセミナーを担当。オンラインセミナーの実施やeラーニングシステムを使った動画コンテンツの制作にも注力する。コンテンツの企画から講師までを一貫して手掛け、通年80回以上の講師実績を持つ。また、イーバリューの法令判断担当として、クライアントの法解釈に関する質問や相談に対応。対応件数は年間約1,000件に上る。法令知識だけでなく、省庁や管轄自治体等の行政への聞き取り調査も日常的に行っており、効果的な行政対応のノウハウを持つ。