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コラム

工事現場で出た廃棄物は誰の責任か──建設廃棄物は原則「元請業者」が排出事業者になる(廃掃法第21条の3)

基準時点:2026年7月現在

建設現場から出る廃棄物の処理責任は、元請業者と下請負人のどちらにあるのか。重層下請構造のもとで所在が問われやすいこのテーマを、廃棄物処理法の条文と環境省の建設廃棄物処理指針に沿って整理します。

結論
建設工事に伴って出る廃棄物(建設廃棄物)は、原則として、その工事を発注者から直接請け負った元請業者が排出事業者となり、処理責任を負います。
根拠は廃棄物処理法(廃掃法、正式名称:廃棄物の処理及び清掃に関する法律)第21条の3第1項です。
この元請業者への一元化は、平成22年(2010年)5月19日公布・平成23年(2011年)4月1日施行の改正廃棄物処理法(平成22年法律第34号)で、法律上明確にされました。
実際の施工を下請負人が行っている場合でも、排出事業者としての責任は原則として元請業者に及びます。

この記事で分かること

  • 建設廃棄物の排出事業者が原則「元請業者」になる法的根拠(廃掃法第21条の3第1項)と、それが明確化された改正の時期
  • なぜ元請業者に責任を一元化しているのか(環境省の建設廃棄物処理指針が挙げる建設廃棄物の特殊性)
  • 下請負人が自ら運搬できる例外(廃掃法第21条の3第3項)と、その条件
  • 例外を使うか、許可業者へ委託するかの判断の考え方

なぜ建設廃棄物は原則「元請業者」の責任なのか

建設工事の現場では、発注者・元請業者・一次下請・二次下請……と、多くの事業者が一つの工事に関わります。この重層下請構造のもとでは、不適正処理が起きたときに責任の所在があいまいになりやすいという問題があります。

環境省の通知に添付された建設廃棄物処理指針(平成22年度版)は、建設廃棄物の特殊性として次の4点を挙げています。

  • 廃棄物の発生場所が一定しない
  • 発生量が膨大である
  • 多様な種類を混合状態で排出される場合が多いが、的確に分別すれば再生利用が可能なものも多い
  • 廃棄物を取り扱う者が多数存在する(重層下請構造が存在する)

 

こうした特殊性があるため、実際の施工を下請負人が行っている場合であっても、発注者から直接工事を請け負った元請業者を排出事業者とし、元請業者に処理責任を負わせることとされています(廃掃法第21条の3第1項)。従来は、元請業者が総合的な企画・調整・指導を行っていないと認められる場合には下請負人が排出事業者になる、という解釈も示されていましたが、平成22年(2010年)改正の施行に伴い、そうした場合であっても排出事業者は元請業者であることとされました。

元請業者が負う責任と「下請任せ」のリスク

排出事業者である元請業者は、建設廃棄物を廃掃法に従って自らの責任で適正に処理しなければなりません。処理を他人に委託する場合は、元請業者が排出事業者として、委託先の許可の内容を確認したうえで、収集運搬業者・処分業者とそれぞれ書面による委託契約を締結し、マニフェスト(産業廃棄物管理票)を交付・管理する必要があります。

環境省の建設廃棄物処理指針(平成22年度版)も「廃棄物の取扱いを下請負人任せにしてはならない」としています。下請に任せきりにした状態で不適正処理が行われた場合には、排出事業者である元請業者も、委託基準違反や措置命令などの対象となる可能性があります。自社が元請となる工事では、委託先の選定と現場ごとの廃棄物管理に注意が必要です。

実務の現場では、元請責任はどこまで定着しているか

改正法の施行後しばらくは、元請責任や下請負人による運搬特例の理解が十分でないまま、現場運用が行われるケースもありました。たとえば、下請負人が廃棄物を処分業者へ直接持ち込もうとし、処理業者側が、排出事業者は元請であること、直接契約やマニフェストの整理が必要であること、運搬許可の要否を確認すべきことを説明する場面もありました。

改正法の施行後には、住宅の建設現場から出た廃材の処理をめぐり、無許可の業者への委託が問題視された事例も報じられています。委託先が許可を受けた業者かどうかの確認は、元請業者の基本的な確認事項です。

イーバリューの相談対応でも、元請責任や運搬特例の整理が十分でないまま、工事現場の廃棄物処理が進められようとしているケースについて、現在もご相談をいただくことがあります。

下請負人が自ら廃棄物を運搬できる例外はあるのか(第21条の3第3項)

原則は元請責任ですが、廃掃法第21条の3第3項は、一定の少量の廃棄物に限って、元請業者と一次下請負人との間で「下請負人が自ら運搬する」旨を定めた書面による請負契約がある場合に、下請負人が許可を受けずに自ら運搬することを認めています(この場合、当該下請負人を事業者とみなします)。この特例で下請負人が行えるのは運搬のみで、処分は含まれません。また、ここでいう請負契約は元請業者と一次下請負人との間の契約を指し、下請負人同士の契約は対象になりません。

この特例が使えるのは、次の条件のすべてに該当する場合に限られます(条件の詳細は廃掃法施行規則第18条の2で定められています)。

  • 解体・新築・増築を除く建設工事(維持修繕工事)で発注者からの元請負代金の額が500万円以下、または引渡し済みの工作物の瑕疵の補修工事で請負代金相当額が500万円以下であること
  • 特別管理廃棄物以外の廃棄物であること
  • 1回に運搬する廃棄物が1立方メートル以下であること
  • 運搬の途中で保管を行わないこと
  • 廃棄物を生ずる事業場の所在地が属する都道府県、またはその都道府県に隣接する都道府県の区域内にある施設(積替え・保管の場所を含む)に運搬すること。当該施設は、元請業者が所有権を有するか、使用する権限を有するものに限られること
  • 運搬する廃棄物の種類・数量等を記載した書面と、その運搬が第21条の3第3項に基づくものであることを証する書面を携行すること

 

なお、この特例により下請負人が事業者とみなされるのは、自ら行う運搬に関してのみです。処分は元請業者(または元請業者から委託を受けた処理業者)が行う必要があり、処分の委託に係るマニフェストも元請業者が交付します。

例外を使うべきか、許可業者へ委託すべきか

この特例は、1回の運搬量が1立方メートル以下という要件があるため、扱えるのはごく少量の廃棄物に限られます。特例を使うか、元請業者の管理のもとで許可業者に委託するかは、運搬量・運搬先・書面管理の負担等を踏まえて比較し、判断する必要があります。

自社が元請となる工事で、委託先の選定や確認をどう仕組み化するか、現場ごとの廃棄物管理をどう整えるか──こうした廃棄物管理体制の設計・点検についてお悩みの際は、イーバリューにお気軽にご相談ください。

よくある質問(FAQ)

Q. 建設工事で出た廃棄物の排出事業者は、誰になりますか?
A. 原則として、発注者から直接工事を請け負った元請業者が排出事業者になります。根拠は廃掃法第21条の3第1項で、実際の施工を下請負人が行っている場合でも、処理責任は原則として元請業者に及びます。

Q. 元請業者に責任を一元化する制度は、いつからのものですか?
A. 平成22年(2010年)5月19日公布・平成23年(2011年)4月1日施行の改正廃棄物処理法(平成22年法律第34号)で、建設廃棄物の処理責任を元請業者へ一元化することが法律上明確にされました。

Q. 下請負人が自分で廃棄物を運搬できる例外はありますか?
A. 例外的に可能です。ただし、廃掃法第21条の3第3項と施行規則の定める条件をすべて満たす場合に限られます。具体的には、発注者からの元請負代金が500万円以下の維持修繕工事等であること・特別管理廃棄物以外であること・1回1立方メートル以下であること・運搬の途中で保管を行わないこと・運搬先の要件等です。この場合、元請業者と一次下請負人との書面による請負契約で運搬について定めることに加え、運搬時には法令で定める書面を携行する必要があります。行えるのは運搬のみで、処分は含まれません。

Q. 下請に工事を任せていれば、元請は廃棄物の責任を負わなくてよいのですか?
A. いいえ。原則として排出事業者は元請業者であり、環境省の建設廃棄物処理指針も廃棄物の取扱いを下請負人任せにしてはならないとしています。下請に任せきりにした状態で不適正処理が行われた場合には、排出事業者である元請業者も、委託基準違反や措置命令などの対象となる可能性があります。

Q. 少量廃棄物の運搬は、特例を使うべきですか?
A. 一概にはいえません。この特例は1回1立方メートル以下等の条件があり、条件を満たしているかの確認や携行書面の管理も必要です。特例の利用と許可業者への委託のどちらが適切かは、運搬量・運搬先・書面管理の負担等を踏まえて判断する必要があります。

出典

 

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Takeshi Sato

環境コンサルティング事業部

チーフマネージャー

セミナーインストラクターとして、数々のセミナーを担当。オンラインセミナーの実施やeラーニングシステムを使った動画コンテンツの制作にも注力する。コンテンツの企画から講師までを一貫して手掛け、通年80回以上の講師実績を持つ。また、イーバリューの法令判断担当として、クライアントの法解釈に関する質問や相談に対応。対応件数は年間約1,000件に上る。法令知識だけでなく、省庁や管轄自治体等の行政への聞き取り調査も日常的に行っており、効果的な行政対応のノウハウを持つ。

Takeshi Sato