コロナ禍の実地確認はどうする?

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コロナ禍の実地確認はどうする?

不要不急の出張を控えた各社、実地確認も

廃棄物管理業務で重要な出張といえば「実地確認」があります。
しかし、コロナ禍の現在、実地確認を控える動きが見られています。今回、改めて「実地確認」の義務を整理し、感染症のリスクへの対応を踏まえてどうすべきか?を考えてみたいと思います。

実地確認の法的位置づけは?

そもそも、「実地確認」の法的位置づけはどのようなものだったでしょうか?おさらいしておきます。廃棄物処理法では、「処理状況の確認」について明記された条文があります。

事業者は、産業廃棄物の運搬又は処分を委託する場合には、当該産業廃棄物の処理の状況に関する確認を行い、当該産業廃棄物について発生から最終処分が終了するまでの一連の処理の行程における処理が適正に行われるために必要な措置を講ずるように努めなければならない。(廃棄物の処理及び清掃に関する法律 第12条7項)

この「処理の状況に関する確認」というのが、法律の該当部分です。
しかし、「実地」という言葉は使われておらず、特に方法や頻度が指定されていません。また、「努めなければならない」と、曖昧な表現で締め括られています。さらに、この条文には対応する罰則規定がありません。確認方法は指定されておらず、「努めなければならない」という表現、罰則なし…。これらの要素が相まって「努力義務」などとも呼ばれています。

「努力義務」は、実態として「義務付けられていない」と考える企業も少なくありません。このように、法律上では「実地確認」は明確に義務付けられているとは言えない状態です。一方で、地方条例では「実地確認」について更に具体化されているものが多くあります。

多くの自治体が、委託契約前の確認を義務付けています。さらに、委託期間中の定期的な確認を義務付けている自治体も多くあり、頻度は1年に1回が最も多く、確認した際の記録を保存することを義務付けている自治体も少なくありません。

実地確認の条例が特に厳しい県を例にあげます。愛知県です。
愛知県は平成30年10月から、「実地確認を怠ったものに対する勧告・公表の規定」を追加しました。他の自治体に先駆けて、実地確認を行わない工場など排出事業者に対する規制を強化しています。

その他の自治体でも規制強化の傾向があります。条例改正の可能性もあるので、自社が属する管轄自治体の条例や指導要綱などは定期的にチェックする必要があります。

愛知県HP 参照

実地確認自粛…法的にはOK?

新型コロナウイルスのような感染症リスクがある場合、長距離の移動を伴うことも多い実地確認は自粛しても良いのでしょうか?

不要不急の外出を自粛するよう強く要請されている状況下であれば、自粛すべきかと思います。特に自治体独自の条例等がなく、法の規定のみで運用されている自治体に属する事業者は、迷わず自粛しても良いレベルでしょう。「実地」と明示されていないのですから、緊急事態措置下で無理に実地確認を行うことは必須ではありません。

では、「実地」と定められている条例がある自治体に属する事業者はどうでしょうか?

大前提として、対応は各自治体それぞれに異なります。また、事態は刻々と変わります。
まず、執筆時点で条例の規定における実地確認義務を免除、あるいは猶予されるような対応を明確に打ち出している自治体は確認できません。

一方で、問い合わせてみると「このご時世ですから、できる範囲で…」「この時期に多少の対応遅れがあったとしても、強く取り締まることはしませんので…」とやんわりと自粛を容認してくれるようなコメントをする自治体が多くありました。加えて、多くの自治体は実地確認を実施していない事業者に対して強い罰則等を課しているわけではないので、行政から取り締まりを受けるリスクは低いのではないでしょうか?

一例として紹介した愛知県も、規定にあるのは勧告と公表です。勧告…即ち「実地確認を行ってください」と強く要請することも、他の自治体の指導と同様に、可能性としては低いです。万が一、勧告され、それに従わずに公表されたとします。
「2020年に行うべきだった実地確認を行っていなかった」と公表された企業を見て、読者の皆さんはどんなマイナスイメージを抱きますか?「このご時世、そりゃあ自粛が懸命ですね」という感想がほとんどではないでしょうか?

ということで、(少なくとも執筆時点では)公式に免除されてはいないが、行政による取り締まりレベルは非常に低いので、自粛は現実的に可能なレベルといえます。とはいえ、公式に自粛OKとされているわけではありませんので、あとは、各企業がどう判断するかです。

実地確認の自粛は実務上も問題ないの?

行政による取り締まりリスクと並んで、「不適正処理リスク」も考慮しなければなりません。そもそも、不適正処理が行われないようにすることが元々の法律で言う「処理状況の確認」の目的でした。定期的に処分場を訪問することで、適正に処理が可能な委託先かを確認することが目的です。自粛をすれば、この確認はできなくなってしまいます。非常時ですから、全てが完璧でリスクのない状態は作れなくても仕方がないかもしれません。

こんな時は、どんな「リスク」や「デメリット」を会社として受け入れるか決めることが必要です。様々なケースで「ここは仕方がない」と許容する部分を見極めます。継続的に処理委託している先の実地確認を延期することは、実地確認を行わないことによる「リスク」を許容する選択をしたことになります。

一方で、条件の良い処分先が見つかっても、実地確認が行える状況になるまで契約を保留するというケースがあります。これは経済的デメリットを許容し、リスクを避ける選択をしたことになります。すべてを求めると必ず無理が出るため、「リスク」「デメリット」を意識して何を許容するのかを選択する必要があります。

その上で、できれば「リスク」は緩和策を実施したいところです。実地確認ができなくても、webで公開されている情報や、処理会社から提供を受けられる書類によって審査をする方法は実地確認条例がない自治体の排出事業者がよく行っている方法です。実地に行けないのなら、書類審査をより徹底するのも一つの手です。

特に財務関係については、より厳しくチェックすると安心です。不法投棄・不適正処理の影には、必ずと言っていいほど資金難が絡んでいます。

その他には、弊社のようなコンサルティング会社が行った実地確認の記録を受け取って判断するという方法もあります。公式に自粛OKと言われているわけではない中で、自粛するのならば、可能な範囲で確認するための代替案を設ける必要があります。

このように、「リスク」については選択した上で、最大限緩和します。非常時にこそ、「仕方がない」と諦めてしまうのではなく、コンプライアンスを維持するためにも工夫した対応が求められます。

                                     

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Takeshi Sato 環境情報ソリューショングループ マネージャー

セミナーインストラクターとして、数々のセミナーを担当。オンラインセミナーの実施やeラーニングシステムを使った動画コンテンツの制作にも注力する。コンテンツの企画から講師までを一貫して手掛け、通年80回以上の講師実績を持つ。 また、イーバリューの法令判断担当として、クライアントの法解釈に関する質問や相談に対応。対応件数は年間約1,000件に上る。法令知識だけでなく、省庁や管轄自治体等の行政への聞き取り調査も日常的に行っており、効果的な行政対応のノウハウを持つ。