不法投棄等の不適正処理に巻き込まれたらどうなるかが分かる!排出事業者責任とは

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不法投棄等の不適正処理に巻き込まれたらどうなるかが分かる!排出事業者責任とは

※2020年1月8日更新。

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”不法投棄に巻き込まれたらどうなるか”を解説したシリーズコラムをお送りいたします。第1弾の今回は、委託している処理業者が起こした不法投棄・不適正処理等の重大事件で、排出事業者はどの程度の罪になるのか?を中心に詳しく解説いたします。

シリーズのその他のコラムは以下からご覧ください。
第2回:立入検査で法律違反が発覚したらどうなる?排出事業者の罰則

第3回:些細なミスでも本当に罰則が科せられるの?万が一の対応方法

処理業者にお任せが1番怖い!~事例:大学職員3名が逮捕~

法律上の責任は排出事業者にあり!

「廃棄物の処理は、処理業者にお任せしている」こんな言葉を言ったこと、聞いたことはありませんか?

私はコンサルタントとして、日々、廃棄物管理の実務現場に足を踏み入れると、「お任せしている」は本当によく聞く言葉です。しかし、法律上で規定されている「委託」と排出事業者が抱く「お任せ」のイメージに大きな乖離があることも少なくありません。多く事業者が「廃棄物に関することは、業者さんの仕事」という「イメージ」をもっているように思えます。さらに、「廃棄物処理法違反」というものは、悪意のある排出事業者か、廃棄物を日々大量に取扱う処理業者の世界の言葉だと考えている節があるようです。

そのため、法律上は排出事業者に課せられる責任があるにもかかわらず、どこか他人事になっていて「当社は大丈夫」という根拠のない自信につながっている場合もあります。

2016年2月 大学で3名の逮捕者

しかし実際には、排出事業者に重い責任があります。

2016年の2月に、A大学から排出される一般廃棄物が不適切な取り扱いをされていたとして、3名の職員が逮捕されました。大学当局は2月19日にホームページで事実関係を公表しています。

廃棄物処理に係る法令違反及び第三者委員会設置について(ご報告)

 1 月 19 日にA社の社員4名(うち代表取締役社長は学校法人A法人事務部長の兼務、また同社総務部長はA大学から出向)が廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反(無許可での廃棄物の収集・運搬) の疑いで逮捕され、同日、大学施設部、法人事務部長室も家宅捜索を受けました。2 月 9 日に 20 日間の勾留を経て「処分保留」で 4 名の逮捕者全員が拘束を解かれましたが、18 日には無許可業者への委託による同法違反の容疑でA大学職員 3名(施設部長、今出川校地施設課長、同課施設係長) が逮捕されるとともに、再び学校法人の施設が家宅捜索を受けました。(中略)
今出川キャンパス及び学生寮等の廃棄物処理にあたり、 (中略) 2005 年のエンタープライズ社設立以前にも指摘を受けていたようですが、現場で引き継ぎが十分になされず、また、清掃業務がエンタープライズ社に移管されたこともあり、違反状態が長年にわたって放置・見過ごされることになりました。 (後略)

A大学公表メッセージ

報道によると、紙くずなど900gを不適正に委託したとされています。大学は、京都市の業許可を得ていないAエンタープライズ社に処理業務を委託し、エンタープライズ社も許可を得ていない業者に業務を再委託したのです。下請けなどへの「再委託」は法律で禁止されている行為です。

●事件の流れ(▼クリックで拡大できます)

「お任せ」をしていて、不法投棄等の不適正処理や無許可業者への委託が発覚したときに、逮捕や罰則(本件はまだ確定していないようですが)に課せられるのは、「任せた側」「任された側」両方であることがよくわかる事件です。

廃棄物の処理及び清掃に関する法律では、「事業者は、その事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理する」とされており、排出事業者の責任が非常に重くなっています。

そのため、今回はA社には無許可で収集運搬の業務を行った”無許可営業”という罪で、それと同時に、排出事業者であるA大学には、”無許可業者への委託”という罪で、複数の逮捕者が出てしまったわけです。

不法投棄等の不適正処理が起こった場合に、想定される責任の取り方

許可業者への委託でも求められる排出事業者責任

先述の事例は、無許可業者への委託によって排出事業者が逮捕されました。「さすがに、無許可業者には委託しないよ!」という声が読者の皆様から聞こえてきそうです。

許可業者に委託している廃棄物の担当者の方から「行政が審査をして許可を出したのだから、万が一不適正処理があっても行政に責任を持ってほしい!」「行政が認めた業者に委託をしているのだから、自分たちに責任が問われるのはおかしい!」とご意見をいただいたことがあります。

確かにお気持ちはよく分かります。ただ廃掃法はそのようなつくりになっていないのです。行政は、基準に適合した申請があれば、必ず許可を出しては必ず許可を出さなければなりません。そのため、最低限の基準をクリアしていれば機械的に許可をだします。

例えば、自動車の運転免許は試験に合格すれば基本的に誰でも取得できます。 「試験は合格だけど、性格が怒りっぽいから事故を起こしそうだ」という理由で免許が取得できないということはありません。 産業廃棄物処理業の許可も同じように「申請基準は満たしているけど、違反をしそうだから許可しない」という事はありません。

許可業者に委託していても、不適正処理の責任を求められる可能性が大いにあります。

不法投棄廃棄物の除去費用の負担を命じられる”措置命令”

例えば、許可業者に委託をし、不法投棄が起こった場合はどうなるのでしょうか?

不法投棄された廃棄物は”行政代執行”として行政によって除去されることもありますが、これは最終手段です。その前に「排出事業者責任」に則して排出事業者へ責任追及が行われます。しかも、その代執行の費用は、できる限り排出事業者へ請求されます。

排出事業者責任は廃掃法上で「事業者はその事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない(法第 3 条の1)」と表現されています。そのため「他人に委託したとしても、委託先で適正処理できない場合は、委託した側(排出事業者)に責任がある」ということです。

責任追及の方法は、法 第19条の5及び6に規定する措置命令で定められています。これらの条件に照らして、自らの責任を全うしていることが証明できない場合、”措置命令”として不法投棄された廃棄物の除去等を命じられてしまう可能性もあるのです。

 

委託業者の不法投棄により排出事業者の社名が公表…。
ブランドイメージを毀損

また、たとえ逮捕までされなくても、不法投棄された廃棄物から排出事業者が特定され、社名の公表がされる場合もあり、ブランドイメージが大きく傷つきます。それは少量の不法投棄でも同様です。

ダイコーの不適正処理(横流し)事件でますます意識される排出事業者責任

食品リサイクル業者ダイコーによる廃棄食品横流し事件、通称ダイコー事件では、多くの食品メーカーが巻き込まれました。後に、廃棄物処理法が改正された際には、マニフェストに関する違反に対しての罰則強化や、電子マニフェストの一部使用義務化など、ダイコー事件がきっかけだと思われる規制強化が行われています。

環境省HPではこのような資料が公開されています。

ダイコー事件と排出責任―CoCo壱番屋は被害者か?(環境省参考資料)※11ページより

排出事業者責任に関して、汚染者負担の原則という上位概念を絡めて追求しています。
驚くべきは、これが『中央環境審議会循環型社会部会廃棄物処理制度専門委員会(第4回)』の参考資料として使用、公開されている点です。

ますます厳しくなっていくことが予測される廃棄物処理法の中で、排出事業者責任も例外なく厳格化していくことでしょう。

お問合せ・ご相談はこちらから

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「委託している処理業者で不法投棄・不適正処理があった…。どうすればいいの?」

 

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Takeshi Sato 環境情報ソリューショングループ マネージャー

セミナーインストラクターとして、数々のセミナーを担当。オンラインセミナーの実施やeラーニングシステムを使った動画コンテンツの制作にも注力する。コンテンツの企画から講師までを一貫して手掛け、通年80回以上の講師実績を持つ。 また、イーバリューの法令判断担当として、クライアントの法解釈に関する質問や相談に対応。対応件数は年間約1,000件に上る。法令知識だけでなく、省庁や管轄自治体等の行政への聞き取り調査も日常的に行っており、効果的な行政対応のノウハウを持つ。