【行政処分】立入検査で法律違反が発覚したらどうなる?排出事業者の罰則

【【行政処分】立入検査で法律違反が発覚したらどうなる?排出事業者の罰則

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【行政処分】立入検査で法律違反が発覚したらどうなる?排出事業者の罰則

※2020年1月8日更新。

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”不法投棄に巻き込まれたらどうなるか”を解説したシリーズコラム。第2弾は、委託している処理業者が起こした不法投棄・不適正処理等の重大事件で、排出事業者自身の法律違反が発覚するリスクについて詳しく解説いたします。
シリーズのその他のコラムは以下からご覧ください。
第1回:不法投棄に巻き込まれたらどうなるか分かる!排出事業者責任とは
第3回:些細なミスでも本当に罰則が科せられるの?万が一の対応方法

不法投棄・不適正処理をきっかけに発覚する自社の法律違反

立入検査で自社の些細なミスが浮き彫りに

行政は、不法投棄や不適正処理を発見した場合、当事者や関係者(取引先等)に立入検査をする権限を持っています。

ここで、関連する書類等を徹底的に精査し、違反がないかどうかを見極めるのです。なぜなら、行政はここで排出事業者の違反を発見すれば、義務が果たせていないことを理由に排出事業者責任を問うことができるからです。

違反を発見しなければ、【廃棄物事件に巻き込まれたときに読むコラム】排出事業者はどれくらいの罪になる?で解説した措置命令の対象とすることができません。すると、不法投棄や不適正処理の後始末をする者がいなくなり、行政主導で行わなければならない可能性が高いからです。

不法投棄や不適正処理の後始末に税金を投入するという行為は、市民の理解を得難いため、行政としても最後の手段なのです。

そのため、排出事業者に負担してもらえる材料を立入検査によって探します。

認識されている廃棄物リスクは氷山の一角だった!
100件近くもの改善事項

では、どれくらいの法律違反が潜んでいるのでしょうか。弊社で行う監査(許可証・契約書・マニフェスト・行政提出書類、保管状況を検査し、リスクを抽出するサービス)では、1拠点で100件近くもの改善事項が出てくることがあります。これは会社の規模に関わらずです。

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毎回、どの企業様も、予想をはるかに上回る件数に驚かれます。

なぜなら、『廃棄物の管理を怠っている』とお思いの企業様はいないからです。認識していなかったリスクが、行政の立入検査等によって、ある日突然、明るみに出るのです。

些細な法律違反が発覚したとき、すぐに罰則が下るの?

直罰(直接罰)と間接罰

もし、立入検査で違反が発覚した場合、措置命令(【廃棄物事件に巻き込まれたときに読むコラム】排出事業者はどれくらいの罪になる?で解説)だけで済むとは限りません。違反と罰則はセットですから、違反が発覚すれば当然、罰則の心配も出てきます。

中には、「行政から注意を受けたら、すぐに直せば大事に至らないのでは?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。残念ながら、いまからご説明する理由でそういうわけにはいかないのです。

「法律違反があったときに、すぐに罰則が下るのか?」という質問に回答するのなら「”直罰にあたる違反”であれば、すぐに罰せられる可能性が高くなります。」となります。

罰則には直罰(直接罰)と間接罰という概念があります。

  • 直罰・・・違法行為に対して即時に適用される罰則
  • 間接罰・・・違法行為に対して、まず行政指導や勧告、行政命令が行われ、その指導・命令に違反する行為があった場合に、
          それを理由として適用される罰則

例えば、水質汚濁防止法でも排出基準に適合しない汚水を排出した場合、改善命令などの行政処分を経ることなく、直ちに違反者として処罰されることがあります。それが直罰です。

法律の罰則規定を読むと「~した者、~しなかった者」と書かれています。その中で、罰則規定に5カ所のみ記載がある「~の規定による命令に違反した者」と表記されているのが間接罰であると考えて頂くと分かりやすいと思います。それ以外はすべて直罰です。

排出事業者への主な罰則一覧(直罰と間接罰)

ということは、「直罰だったら発覚した時点でアウトだけど、間接罰だったら指導や命令に従えばOK」ということでしょうか?

廃掃法において排出事業者を対象とした直罰と間接罰には、主にどのようなものがあるのか一覧表で見てみましょう。

発覚したらすぐに罰せられる…。直罰が多い理由

「直罰ばっかりじゃないか!?」とお思いでしょうか?残念ながら、事実です。

理由1:言われたら直そう…。を防ぐため

違反行為に対して、法の規制を直罰、間接罰のどちらを設定するのかという判断基準は色々あります。

廃掃法に直罰が多い理由の一つに、「命令だけでは違反が再発してしまう」というものがあるようです。改善命令などを受けた後で、すぐに直せる違反行為を間接罰にしていたら、罰則として機能しないということです。

「小さなことだから言われたら直そう」という考えを予想してのことですね。

理由2:発行済みの書類の違反は取り消せないため

また、委託契約書やマニフェスト等、書類関係の不備は、保管基準のように「これから改善する」ということができません。

既に違反となる書面を発行してしまっていて、違反の事実を過去に遡って消すことはできないからです。 それでは違反のある書類を破棄して、代わりに適法な書類を作り直せば全て解決するかというとそうではありません。違反書類であったとしても、破棄したら「保存義務違反」です。 そのため、違反が発覚した時点で、罰則ということになっているのでしょう。

理由3:もちろん重大な違反も直罰

加えて、「違反による実害リスクが高いと認識される場合」も直罰になるので、当然、不法投棄を始めとした重大違反も直罰です。

細かい書類ミスで本当に罰則が適用されるの!?

「でも、細かい書類のミスによる罰則ってあまり聞かないけど…」と思われるかもしれません。確かに、実際に排出事業者が陥るミスの頻度に比べ、公になった罰則事例は少ないように感じます。

シリーズ最終回では、その理由について私の見解をお伝えいたします。

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「自社の抱える廃棄物リスクの度合いを知りたい」
「委託している処理業者で不法投棄・不適正処理があった…。どうすればいいの?」

 

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Takeshi Sato 環境情報ソリューショングループ マネージャー

セミナーインストラクターとして、数々のセミナーを担当。オンラインセミナーの実施やeラーニングシステムを使った動画コンテンツの制作にも注力する。コンテンツの企画から講師までを一貫して手掛け、通年80回以上の講師実績を持つ。 また、イーバリューの法令判断担当として、クライアントの法解釈に関する質問や相談に対応。対応件数は年間約1,000件に上る。法令知識だけでなく、省庁や管轄自治体等の行政への聞き取り調査も日常的に行っており、効果的な行政対応のノウハウを持つ。