【話題の埋立廃棄物】意外と多い!購入した土地から“廃棄物交じり土“が出てくる

【話題の埋立廃棄物】意外と多い!購入した土地から“廃棄物交じり土“が出てくる

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【話題の埋立廃棄物】意外と多い!購入した土地から“廃棄物交じり土“が出てくる

建設工事等で遭遇する“廃棄物混じり土“とは?

最近話題の某学園問題で、「廃棄物が混ざった土砂」の存在を知った方も多いのではないでしょうか?法律的に明確な定義が存在するわけではないので、「産廃土」「廃棄物混じり土」「ごみ混じりの土砂」等々、報道機関によってネーミングは様々です。こちらでは「廃棄物混じり土」で統一して解説します。

皆さんに知っていただきたいのは、廃棄物混じり土は想像以上にありふれていて、誰でも遭遇する可能性があるということです。土地を売る側、買う側、工事業者、廃棄物処理業者etc…、その理由と、その対処法を解説します。

廃棄物が出土=不法投棄現場ではない!?

平成8年以前につくられた“ミニ処分場”とは?

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「土地を掘り返したら廃棄物が出てきた」と聞けば、過去に不法投棄があったのか?と考えてしまいますね。確かに、不法投棄の現場を掘り起こすという可能性もなくはないでしょう。しかし、もっと高確率で遭遇するのは法整備前には合法だった“埋立現場”です。

どういうことかと言いますと、廃棄物を埋め立てる最終処分場を設置する場合には、どんなに小さくてでも設置許可を必要とします。しかしこれは、平成9年に廃棄物処理法が改正されてからのルールです。意外と最近のことです。

実は改正前は、安定型処分場で3000㎡以上、管理型処分場で1000㎡以上が設置許可の対象でした。裏を返せば、これ以下の規模だったら、許可が要らないため、勝手に埋立が出来てしまったのです。

こうしてできた最終処分場所は“ミニ処分場”と呼ばれています。許可不要の処分場にも法律で定められた処理基準は適用されるのですが、そもそも行政が存在を把握していない処分場なので、適切な管理がなされていたとは言い難い状況です。こうした背景があるため、「土地を買ったら、実は過去ミニ処分場だった場所で、知らずに掘り返してしまった!」なんてことが起こるのです。

ヤマトホールディングスの購入した土地に石綿!

過去には、ヤマトホールディングスが購入した土地に、石綿含有のスレート片が多数混入していたとして、撤去費用85億509万5,193円の損害賠償を求める訴訟を起こしています。この件で、東京地方裁判所が撤去費用の一部として、56億1,812万4,016円の支払いを、元の土地所有者に命じる判決が下っています。

掘り返したが最後、後戻りはできない!

“廃棄物混じり土“の埋め戻しは不法投棄!

もし、運悪く廃棄物混じり土に遭遇してしまったらどうすれば良いのでしょうか?

掘り返してしまった後で「元々埋まっていたものだし…そっと元の場所に戻しておこう」と考えてはいけません。埋め戻しは絶対NGです!

小規模な埋立は、過去合法だっただけであって、現在は廃棄物処理法の中でも最大の罰則(法人3億円以下の罰金、個人5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金又はこの併科)が定められている重罪です。

現行法には量の規定はなく、1㎏でも不法投棄です。過去には木くずを18kg投棄したとして行政処分がされた例もあります。

山口県HPより不法投棄の発表

廃棄物混じり土は、掘り起こした瞬間から廃棄物として厳格に取り扱われなければならず、過去の基準を今に持ち越すことはできないのです。嫌なタイムカプセルですね…。

掘り返してしまうと大変なことになるので、そもそも掘り返さないという手はどうでしょうか?『建設工事で遭遇する廃棄物混じり土対応マニュアル』(国立研究開発法人土木研究所 監修)には「未掘削存置型」という対策が記載されています。必要に応じて地耐力を上げる等の対策はとるが、有害物質が検出されない場合等、土地の使用に支障が生じる恐れが無い場合には、そのまま土地を使うということです。これならば、最小限の対策で済みます。(個人的には、問題の先送りに他ならないと思ってしまいますが…。)

処理責任はどこか?

莫大な費用のかかる“廃棄物混じり土”

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廃棄物を掘り返して処分するのは大変です。廃棄物の状態や土地の規模、近くに適正処理可能な施設があるか?等々諸条件によって大きく変わりますが、通常の廃棄物を処理する場合に比べて数倍の費用が必要となることは、想像に難くありません。土砂でぐちゃぐちゃになり、分別もままならないような廃棄物ですから、費用は莫大です。

廃棄物が埋まってる土地は購入時・売却時に注意!

もし、あなたが土地を購入する側で、購入する土地に廃棄物が埋まっていることが事前に分かっていれば事前に処理してもらうか、土地評価額に廃棄物分を考慮してもらいましょう。大幅な値引きをしてもらわなければなりません。
逆に土地を売る側であれば、廃棄物が埋まっていることをしっかりと告知し、適切な対応をしなければなりません。廃棄物が埋まっていることを知りながら、何もせずに売却した場合、後々訴訟問題に発展する可能性が高くなります。

しかし、「そもそも廃棄物が埋まっていることを知らない。」というケースが多くあります。売却後に発覚し、買主からのクレームとなることもありえます。会社の土地を売却する場合は、「過去どんな廃棄物管理が行われていたのかなんて、最近担当になった自分には分からないよ」というのが本音ではないでしょうか?それでも、様々な状況を鑑みて、自社で過去埋められていた可能性が高いのであれば、企業責任として処理費用を賠償する等の対応が必要です。

過去の賠償事例では、売却側の責任が大きい傾向

「過去、土地の所有者が短いスパンで変わっていて、いつのタイミングで誰が埋めたものかわからない…。」という場合は、当事者間で協議するしかありません。誰が埋めたかを追跡できれば良いのですが、現実的に難しいでしょう。協議が上手くいかなければ、前述のように訴訟になってしまいます。現段階では売主に大幅な賠償命令となっていますので、誰が埋めたかが分からずとも、売主側の責任が大きいと考えられます。

訴訟リスク・不適正処理リスクを考え、最適な立ち回りを…

廃棄物混じりの土地を売った事件や、廃棄物混じり土を不法投棄した事件に発展し、報道される場合には、どうしても知名度が高い企業や人物が非難の対象となってしまいます。

売主は適切に処理費用を負担し、売却後に買主が不適正処理をした場合、法的な責任を問われるのは買主です。しかし、売主側の方が名の知れた企業だった場合には、報道上は売主側を大きく取り上げる可能性が高いです。こうしたリスクを考えれば、多少コストをかけてでも、自社にとって適切な処理を行うのが安心です。

廃棄物に関する万が一の事態に不安がある方へ

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Takeshi Sato 環境情報ソリューショングループ マネージャー

セミナーインストラクターとして、数々のセミナーを担当。オンラインセミナーの実施やeラーニングシステムを使った動画コンテンツの制作にも注力する。コンテンツの企画から講師までを一貫して手掛け、通年80回以上の講師実績を持つ。 また、イーバリューの法令判断担当として、クライアントの法解釈に関する質問や相談に対応。対応件数は年間約1,000件に上る。法令知識だけでなく、省庁や管轄自治体等の行政への聞き取り調査も日常的に行っており、効果的な行政対応のノウハウを持つ。