実地確認のマンネリ予防!上級者向け実地確認のポイント(後編)

実地確認のマンネリ予防!上級者向け実地確認のポイント(後編)

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実地確認のマンネリ予防!上級者向け実地確認のポイント(後編)

今回は、前回に引き続き、もう何度も実地確認は行っている!という上級者の方向けに、いつもより更に一歩踏み込んだ実施確認を行うポイントを解説していきます。

引き続き、平成28年6月に発表された「食品廃棄物の不正転売防止に関する産業廃棄物処理業者等への立入検査マニュアル」を参考にします。

▼前編の記事は、こちらからご覧ください。▼
実地確認のマンネリ予防!上級者向け実地確認のポイント(前編)

一歩踏み込んだ実地確認のポイント~現地で行うべき確認~

前編では、実地確認に向かう前の事前準備に焦点を当て、解説しました。今回は、現場でのポイントを解説していきます。

ポイント1:廃棄物の受入態勢の状況を確認

まずは、廃棄物の基本的な受入の流れを確認します。 その際、押さえるポイントは、処理会社へ搬入されてくる廃棄物は『処理に適さない物、契約外の物が混入する可能性がある』ということを前提とする点です。

排出事業者側の立場でも、すべての廃棄物が適切に分別できているという管理体制を作るのは、かなり難易度が高いのではないでしょうか?受け入れられない廃棄物が混合した場合を想定して、以下の①~③を確認しておく必要があります。

また、④「処理能力を超えた受入を行っていないか」についても、同時に確認する必要があります。

(年間受託量/施設稼働日数)<(処理能力/日)となっている場合、許可能力以上の処理を行っていたり、処理が追いつかずに未処理在庫が多くなってしまったりといった事態が予想されます。

 

 

ポイント2:処理後残さや生産物の保管状況を確認

処理された後の残さや、生産物の保管状況はどうなっているのかの確認も重要です。 主なポイントとして以下の3点があげられます。

未処理在庫の保管量はもちろん重要なポイントですが、処理後の在庫量も同じくらい重要なポイントです。インプットとアウトプットのバランスが取れていなければ、継続的かつ安定的な処理はできません。

最悪の場合、リサイクル製品を作ったものの、販路が安定せず不法投棄……ということもあり得ます。一見した在庫量だけでなく、可能であれば帳票類を確認して、安定的に出荷できているかを確認します。

過去には、行政に提出された実績報告を元に、受託量に比べて処理実績・最終処分量が少ないということから発覚した不法投棄事件もあります。

▼ 受託量と処理実績の比較から分かる不法投棄の可能性

受入量と比較して、処理後残さ量(2次処理委託料)、生産物量(販売量)が著しく少ない場合には、不法投棄等の可能性を考え、慎重に確認する必要があります。

 

 

ポイント3:マニフェストの管理状況を確認

一般的なマニフェストの要件に加えて「どの段階で処分終了年月日としているか。またその根拠は何か」というチェックポイントがあります。

昨年8月、三重県で「マニフェストに未来の日付を書いた」として事業停止の行政処分となった事例があります。

▼ 三重県HP 行政処分より

実は、産業廃棄物を受け入れた後の工程では、さまざまな排出事業者から受託した廃棄物が混ざり、「どの段階で、どの排出事業者の廃棄物が処理されたのか」を判別するのは想像以上に難しいことなのです。製造業の方は、製品が完成した段階で、「いつ購入した原材料・部品が使われたものなのか?」を判別するようなものとお考えいただくのがよろしいかと思います。

しかし、実際の現場ではこの「原材料・部品」にあたる「廃棄物」の搬入は、ほぼランダムという悪条件が付きます。 そのため、処分終了の判断基準を質問した時に、明確な回答があると、日常の管理レベルの高さをうかがい知ることができます。

 

 

ポイント4:契約書等も隅々までチェック

「産業廃棄物処理委託契約書の記載内容に不備や問題はないか」は当然として、「出荷・搬出先との売買契約を確認する」など、アウトプット全般に関してのチェックをすることが重要です。可能であれば、帳票類も確認し、リサイクル製品の販売実績を確認します。

また、2次処理委託先の信頼性も忘れてはならないポイントです。中間処理までは適正に行われても、2次処理委託先で不適正処理が行われては、元も子もありません。

確認方法としては「2次処理委託先との委託契約書を確認する」に加えて、「2次処理委託先への実地確認記録を確認する」が有効です。排出事業者の皆さんが実地確認を徹底されるように、中間処理会社も適切な実地確認を行っていることが確認できれば、一定の信頼をもって委託することができるでしょう。

 

 

結局は、排出事業者の自主性にゆだねられている

ここまで、様々なチェックポイントをご紹介しましたが、これらはいずれも高いレベルの実地確認を行うためのノウハウです。

実地確認は、国の法律で厳密な履行義務や罰則が規定されておらず、条例でも義務化されていない自治体は数多くあります。条例で義務化されている自治体でも、ほとんどの場合「実地にて確認する」「記録を残す」ということが規定されているくらいで、その詳細な内容についてまでは求めていません。

よって、極端な表現をすると「実地に行った」という事実さえ記録されてあれば良いということになってしまいます。だからこそ、実地確認の質は排出事業者それぞれの自主性に委ねられています。

「訪問すること」だけを目的にするのも、「委託先の信頼性を評価する」という本来目的を達成するのも、排出事業者の自由です。しかし、お忙しい業務の中で時間と工数、交通費をかけて実地確認をするのですから、充実した内容にしていただくことをおすすめします。

 



Takeshi Sato 環境情報ソリューショングループ マネージャー

セミナーインストラクターとして、数々のセミナーを担当。オンラインセミナーの実施やeラーニングシステムを使った動画コンテンツの制作にも注力する。コンテンツの企画から講師までを一貫して手掛け、通年80回以上の講師実績を持つ。 また、イーバリューの法令判断担当として、クライアントの法解釈に関する質問や相談に対応。対応件数は年間約1,000件に上る。法令知識だけでなく、省庁や管轄自治体等の行政への聞き取り調査も日常的に行っており、効果的な行政対応のノウハウを持つ。