今さら聞けない家電リサイクル法…産廃処理はOK?NG?

今さら聞けない家電リサイクル法…産廃処理はOK?NG?

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今さら聞けない家電リサイクル法…産廃処理はOK?NG?

6月12日、経産省・環境省が大手引っ越し業者S社に対して、家電リサイクル法対象機器の不適正処理に対する是正勧告を行いました。

引っ越しの際、引き取った廃エアコンが家電リサイクル法の規定で認められていない「スクラップ業者への引き渡し」がされていたという内容です。

同時に、引っ越し業界全体への注意喚起も行われており、今後家電リサイクル関連はより厳しくチェックされる可能性があります。

では、家電リサイクル法で求められる「適切な状態」はどんなものでしょうか? 今回のコラムでは、ニュースを参考にしながら、家電リサイクル法の適切な運用方法について解説していきます。

家電リサイクル法の対象とそれぞれの責任・役割

家電リサイクル法の対象物

エアコン・テレビ・冷蔵庫(冷凍庫)・洗濯機(乾燥機)の4品目が「特定家電」として定められており、これらが廃棄物となった場合「家電リサイクル法」の対象になります。

リユース品に関しては、対象ではありません。一方、有価物であったとしてもリユースでない場合は、除外されません。

排出者の役割

適正な引渡し方法は、
①廃棄する商品を購入した「小売業者」に持っていき、引取りを求める
新しい商品を購入すると同時に販売する「小売業者」に引き取りを求める(廃棄する機器を買ったところでなくてもよい)
の2点です。

料金の負担としては、対象物ごとに定められたリサイクル料金を支払って「家電リサイクル券」を購入する必要があります。

引取業者の役割

製造業者等への適正な運搬をすることです。

また、小売業者が自ら回収・運搬する場合には、一般廃棄物もしくは産業廃棄物収集運搬の許可は不要となります。

運搬先は、「指定引取場所」と呼ばれる製造業者等が指定するヤードに運搬します。指定引取場所に運搬された後は、製造業者等が責任を持ってリサイクルしなければなりません。(再商品化義務)

S社は何がいけなかったの?

S社が指摘されたのは、指定引取場所ではなく「スクラップ業者」に引き渡した点です。

S社は小売業者に該当する(引越ついでに家具を買い替える需要に対応するため販売も行っていました)とされていましたので、販売時もしくは、過去に販売した物の引取りでしたら、運搬までは自社で行うことができます。

しかし、回収後の運搬先は、指定引取場所でなければならず、「スクラップ業者」に持ち込んでしまった点が不適正だと指摘されてしまいました。

特定家電、産廃処理ではいけないの?

以上が、今回のニュースを読み解いた解説です。 読者の皆さまの関心は、ニュース内容もさることながら「自社はどうしらいいか?」ではないでしょうか?

家電関連でよく質問をいただくのは「産廃処理ではいけないのか?」というものです。

結論としては、産業廃棄物の業許可として適切な許可を有していれば“法律上は”取り扱いができます。

電子マニフェストの廃棄物分類コードでも「廃電気機械器具」の中に、特定家電に該当する品目もあります。


▲参考:JWNET「電子マニフェストシステム各種コード表」

また、経済産業省が公表している資料「家電リサイクル法のポイント」でも、廃棄物許可業者へ引き渡すルートが記載されているところから、廃棄物処理は違法ではないという事がわかります。

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▲参考:経済産業省HPより

しかし、その処理基準は廃棄物処理法でも「(家電リサイクル法の)製造業者等と同等のリサイクル水準を達成すべき」とされています。

このような行政の姿勢から、むやみに特定家電を一般の産廃業者へ委託するのはリスクとなりそうです。

 

条例を調べたり、自治体への問い合わせを面倒と感じる方へ

Takeshi Sato 環境情報ソリューショングループ マネージャー

セミナーインストラクターとして、数々のセミナーを担当。オンラインセミナーの実施やeラーニングシステムを使った動画コンテンツの制作にも注力する。コンテンツの企画から講師までを一貫して手掛け、通年80回以上の講師実績を持つ。 また、イーバリューの法令判断担当として、クライアントの法解釈に関する質問や相談に対応。対応件数は年間約1,000件に上る。法令知識だけでなく、省庁や管轄自治体等の行政への聞き取り調査も日常的に行っており、効果的な行政対応のノウハウを持つ。