産業廃棄物処理委託の適正コストについて考える
物価高、燃料費高騰、人手不足…昨今の日本国内では、様々なコストが上がっています。...
コラム
欠格要件は、委託先の許可取消に直結する極めて重大なリスクです。廃棄物管理上の重要事項として正確な理解が求められます。
今回、少し珍しい許可取消のニュースが入ってきました。この事例をもとに欠格要件の該当から許可取消となるタイミングについて考えてみたいと思います。
目次
今回取り上げるのは、茨城県の処分業者A社が令和8年2月13日付で許可取消処分を受けたという事例です。
https://www.pref.ibaraki.jp/seikatsukankyo/haitai/fuho/20260213-1syobun.html
取消理由は、代表取締役が覚せい剤取締法違反により有罪判決を受けたこととされています。
覚せい剤取締法第19条は使用禁止規定であることから、本件は代表取締役が覚せい剤を使用した事案であったと推察されます。
まず時系列を整理しておきましょう
平成24年7月19日:懲役1年6か月の判決言渡し
↓
平成24年8月3日:刑確定
↓
↓
令和3年5月10日:刑の執行終了
↓
↓
令和8年2月13日:許可取消処分
平成24年の判決言渡しから、14年が経過。一見すると「判決から取消までが長すぎる」と感じるのではないでしょうか。
しかし、ここで重要になるのが廃棄物処理法における欠格要件の規定です。
廃棄物処理法では、
を欠格要件に該当する者と規定しています。
そして、会社の役員等、経営に関わる重要人物がこの欠格要件に該当した場合「管轄行政は許可を取消さなければならない」とされています。
■ 開始時点
欠格要件の開始は「禁錮以上の刑に処せられた」タイミング、すなわち刑が確定した平成24年8月3日です。
なお、執行猶予付き判決の場合、猶予期間中も欠格要件に該当するかについては法律上明記がありませんが、自治体によっては執行猶予期間中も欠格要件に該当するとHPなどに明示している例があります。
■ 終了時点
本件では、刑の執行終了日が令和3年5月10日です。したがって、令和8年5月9日までの5年間が欠格要件の該当期間となります。
以上を踏まえると、本件では平成24年8月3日から令和8年2月13日までの間、欠格要件に該当しながら許可が維持されていた⋯という構図になります。
加えて、注目すべきは許可更新の事実です。
産業廃棄物処理業は、通常5年に一度、優良認定許可であれば7年に一度許可更新を行わなければなりません。
14年近い欠格期間の中で、本件業者は許可更新を行っていたと見られます。
本件において、なぜここまで長期間にわたり許可取消が行われなかったのか。
報道発表資料だけでは、正確な理由を断定することはできません。
しかし、可能性として最も高いのは、管轄行政が欠格要件該当の事実を把握していなかったという点ではないでしょうか。
廃棄物処理法では、役員等が欠格要件に該当した場合、2週間以内に行政へ届け出る義務が課されています。
しかし、ここで冷静に考えてみる必要があります。欠格要件の該当を報告することは、許可取消対象である事実を自己申告するということを意味します。
事業継続に直結する重大な不利益を伴う行為を、当事者が遵守するかどうか⋯疑問が残りますね。そもそも、順法意識が高い人物・企業であれば、欠格要件に該当する事態にはならなかったはずです。
そのため「欠格要件に該当している事実を届け出ずそのまま許可更新申請を行っていた」という可能性は十分に考えられます。
一方で「行政が欠格要件該当の事実を把握していたが、何らかの手続き上の遅延等により取消しが遅れた」というパターンも理論上は考えられます。
しかし、本件では判決確定から10年以上が経過しており、その間に許可更新も行われている可能性が高いと考えられます。もし、行政が欠格要件該当の事実を把握していたのであれば、更新が認められることは通常考えにくいでしょう。
この点からも「把握していたが放置されていた」という可能性は相対的に低いと推測されます。
では、行政はどのようにして欠格要件該当の事実を把握するのでしょうか。
一般的には、
・裁判所等からの情報共有
・警察・検察との連携
・内部照会制度
などの仕組みによって、刑事処分情報が伝達される体制が存在しています。
しかし、こうした仕組みも必ずしも完全ではないのが現実です。
情報連携のタイムラグや把握漏れが生じれば、欠格要件該当の事実が長期間行政に認識されないままになる可能性もあります。
本件から導き出せる重要な示唆は「委託先の許可が継続しているからといって、問題のない業者であると無条件に信じるのは危険である」という点です。
今回の事例では、欠格要件に該当していた期間中も許可が維持されていました。
つまり「許可が有効である」という形式的な事実だけでは、リスクの有無を完全に判断できない可能性があるということです。
極端な話をすれば、現在契約している委託先の中にも、取消処分がまだ行われていないだけで、実は欠格要件に該当している業者が存在する可能性がゼロとは言い切れません。
もちろん、取引先の役員全員について刑事処分歴を調査することは現実的ではありません。
しかし、だからといって「行政が許可を出しているから大丈夫!」と安心しきってしまうことは避けるべきです。
定期的な実地確認や、財務諸表の確認など様々な角度からのチェックを通じて、継続的に適正処理が行われる体制が維持されているかを、自社の基準でフラットに評価することが重要です。
さらに重要なのは、委託先の許可が永続的に維持される保証はないという前提に立つことです。
欠格要件は、ある日突然発生する可能性があります。役員の個人的な問題であっても、会社の許可取消に直結するのがこの制度の特徴です。
そのため「特定の1社に依存しない(複数の委託先と契約し、リスクを分散する)」といった対策も有効です。「行政が許可更新を認めている」という事実は一つの判断材料ではあります。
しかし、それだけをもって無条件に信用するのではなく、自らの管理責任として委託先の信頼性を審査する姿勢や、万が一許可取消になった際の対策を持っておくことが必要ですね。
セミナーインストラクターとして、数々のセミナーを担当。オンラインセミナーの実施やeラーニングシステムを使った動画コンテンツの制作にも注力する。コンテンツの企画から講師までを一貫して手掛け、通年80回以上の講師実績を持つ。また、イーバリューの法令判断担当として、クライアントの法解釈に関する質問や相談に対応。対応件数は年間約1,000件に上る。法令知識だけでなく、省庁や管轄自治体等の行政への聞き取り調査も日常的に行っており、効果的な行政対応のノウハウを持つ。