代替情報が記載されたSDSは、どう読めばいいのか?
2026年4月から、化学品のSDS(安全データシート)で、成分名を「営業秘密」と...
コラム
「既存の委託契約書は、施行日までに全部作り直さなければいけないのか?」——2026年1月1日施行の廃棄物処理法施行規則の改正について、最も多い質問です。本記事では、排出事業者が、どの契約について、何を、いつまでに対応すべきかを、2026年8月時点の情報に基づいて整理します。
結論
原則として、施行日(2026年1月1日)時点で既に締結している委託契約書を作り直す必要はなく、次回の契約更新時に対応すれば問題ありません。
ただし、施行後に新規締結・更新する契約には改正後の記載事項の反映が必要なため、対象契約の早期の洗い出すことが重要です。
記載が必要になるのは、PRTR法上の「第一種指定化学物質等取扱事業者」に該当し、かつ第一種指定化学物質を規定割合以上含有・付着する廃棄物を排出する場合です。
今回の改正の対象は、次の①②の両方に該当する場合です。
①PRTR法(特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律。化管法とも呼ばれます)における「第一種指定化学物質等取扱事業者」であること
②「第一種指定化学物質」を1%以上(特定第一種指定化学物質は0.1%以上)含有もしくは付着する産業廃棄物を排出すること
PRTR法では、業種・事業規模(従業員数)・対象化学物質の年間取扱量(第一種指定化学物質1t以上、特定第一種指定化学物質0.5t以上)などの条件に合致する事業者を「第一種指定化学物質等取扱事業者」とし、対象物質の排出量・移動量の届出を求めています。経済産業省HPには対象業種・対象化学物質が列挙されており、令和7(2025)年時点で24業種515物質が指定されています。
参考:経済産業省HP「PRTR制度 対象化学物質・対象事業者」
該当判定は、必ずしもゼロからやり直す必要はありません。PRTR法の対象事業者であれば既に「排出・移動量の届出」を行っているはずであり、社内で確認すれば該非判定の結果や、届出対象化学物質の製造・取扱いの有無といった情報を入手できると考えられます。
確認の結果、PRTR法の届出対象事業者でないと分かった場合、厳密には今回追加される記載事項の直接の対象ではありません。ただし、法的義務がなくても対象化学物質を把握して情報提供している企業は多く、実務上は、処理委託先への情報提供の観点から対応が望ましいと考えられる場面があります(後述)。
「第一種指定化学物質等取扱事業者」に該当する場合は、排出する産業廃棄物に第一種指定化学物質が規定の割合以上含有・付着しているかを確認します。実務では、対象化学物質を使用する製造工程から発生する廃棄物に絞って分析することになります。一般的には、対象化学物質を使用しない工程から発生する廃棄物についてまで分析が必要となるケースは多くないと考えられます。一方、対象化学物質を使う工程であれば1%(特定第一種指定化学物質は0.1%)という微量でも該当し得るため、含有の可能性が低い場合であっても、後日の説明責任を考慮し、分析等によって含有状況を確認しておいた方がよいでしょう。
該当する場合(第一種指定化学物質等取扱事業者であり、かつ第一種指定化学物質を規定割合以上含有・付着する廃棄物を排出する場合)、その旨と次の情報を委託契約書に記載します。
これは、石綿含有の有無や水銀含有の有無などの記載を求める廃棄物処理法施行規則第8条の4の2に追加される形です。公益社団法人 全国産業資源循環連合会も、2025年12月公表の資料において、標準様式に当該事項を追加する旨を示しています。実務上は、第一種指定化学物質が廃棄物に含まれる場合には別紙等で情報提供する旨を委託契約書に追記する方法が合理的だと考えられます。
出典:公益社団法人 全国産業資源循環連合会「『産業廃棄物処理委託契約書の手引き』における標準様式の改訂履歴について」(2025年12月)
この追加事項は「対象廃棄物が規制化学物質を含有・付着する場合は情報提供する」という規定にとどまります。実際に該当する場合は、契約書本体又は別紙等により、対象化学物質の名称や量・割合を明示する必要があります。
規定が「該当する場合は、その旨」という書き方のため、該当しない廃棄物であれば、対象化学物質の名称や量・割合を具体的に記載する必要はありません。しかし何も記載しないと「該当しないから書いていない」のか「改正に対応できていないから書いていない」のか区別できません。そのため、現行の委託契約書には該当の有無にかかわらず条文を追加しておくことが推奨されます。
詳細を記載する書面は、新規の書式を用意しなくても廃棄物データシート(WDS;Waste Data Sheet)を活用できます。WDSは環境省が公表する廃棄物情報提供の様式で、第一種指定化学物質を含む危険・有害物質の記入欄が設けられています。なお、改正を受けて「廃棄物情報の提供に関するガイドライン(第3版)」(令和7年12月)が公表されているため、利用にあたっては公開時点の最新版様式を確認する必要があります。
「PRTR法対象物質はこれまでもWDSに書いていたのに、何が改正なのか」という疑問が生じます。答えは「一定要件に該当する場合の情報伝達が、委託契約書の記載事項として明確化されたこと」です。
廃棄物処理法では、適正処理のために処理業者へ廃棄物情報を提供することが定められており、環境省はその手段としてWDSの様式を使った情報提供を推奨しています。従前から適正処理に必要な情報提供は求められていましたが、第一種指定化学物質については、名称や量又は割合までを委託契約書の記載事項として明確に求められてはいませんでした。WDSを作成するかどうかも排出事業者の判断に委ねられており、汚泥やばいじんのように成分が分かりにくい品目には推奨される一方、廃プラや木くずのように一般に有害性が低いと考えられる品目は不要とされてきました。
今回の改正は、WDSの作成有無に関係なく、委託契約書の記載事項として第一種指定化学物質の情報伝達を位置づけた点に意味があります。加えて、対象化学物質の名称だけでなく、量又は割合の情報も委託契約書上の記載事項として明確化されています。WDS第3版では、廃棄物の組成・成分情報として「物質名又は品名」「量・濃度」「CAS登録番号」を記載できる欄が設けられています。そのため、WDSを活用する場合でも、対象化学物質の名称と量又は割合が、契約書本体又は別紙・WDS等で確認できる状態にしておくことが重要です。
厳密に法文だけを読めば「廃棄物に第一種指定化学物質が含有・付着していても、第一種指定化学物質等取扱事業者でなければ、今回追加される委託契約書記載事項の直接の対象には通常該当しない」といえます。
ただし、廃棄物処理法上、排出事業者には従前から「適正処理のために必要な情報」を処理業者へ伝達することが求められています(施行規則第8条の4の2)。環境省も「排出事業者のための廃棄物情報の提供に関するガイドライン(第3版)」(2-7、2-10項)において、第一種指定化学物質等取扱事業者への該否や含有の有無にかかわらず、排出事業者は従前どおり、委託契約書において適正処理のために必要な情報伝達を行う必要がある旨を示しています。したがって、対象化学物質が処理方法や安全管理に影響する可能性がある場合は、PRTR法上の対象事業者かどうかにかかわらず、必要な範囲で情報提供を行うことが望ましいといえます。
参考:環境省「排出事業者のための廃棄物情報の提供に関するガイドライン(第3版)」
実務上は、PRTR法上の対象事業者かどうかだけでなく、対象化学物質の含有状況や処理上のリスクを踏まえて、処理業者への情報提供の要否を判断する場面が増える可能性があります。
本改正の施行日は令和8(2026)年1月1日で、各事業者は改正対応した契約書やWDSの雛形を整備する必要があります。最も質問が多いのは「既存契約書を作り直す必要があるか」という点です。
この点について、改正省令の附則では、施行時点で現に締結されている委託契約については、当該契約の更新までの間は従前の例によるとされています。つまり、施行日に既存契約を直ちに締結し直す必要はなく、次回の契約更新の際に改正対応の内容で締結すればよい、という建付けです。
ただし、施行日(2026年1月1日)以後に新たに締結する契約、および施行日以後に更新する契約については、改正後の記載事項を反映する必要があります。自動更新契約についても、施行日以後最初の更新時期から改正事項を反映する前提で管理するのが安全です。「既存契約は更新時でよい」という点だけが独り歩きして、更新後も旧様式のままでよいと誤解しないよう注意してください。
参考として、過去に「水銀使用製品産業廃棄物」が法定記載事項に追加された際の自治体対応も同様の方向でした。当社で複数自治体へ聞き取り調査を行ったところ、回答は概ね次のとおり共通していました。
基本的には、契約更新のタイミングで改正対応した契約書を使用し、必要な情報を記載すれば問題ありません。自動更新契約については、更新時期の管理に手間がかかるため、現時点で未対応の契約が残っている場合は、対象となる契約を洗い出した上で、改正内容を反映させるとよいでしょう。また、改訂の対象は自社が締結しているすべての委託契約ではありません。第一種指定化学物質を規定割合以上含有・付着する廃棄物に係る契約のみを対象として対応すれば十分です。
対象の絞り込みにはPRTR対象物質の分析が必要なケースもあり、各委託先との連絡や締結事務まで考えると、余裕のあるスケジュールとはいいにくい状況です。まずは自社の委託契約の棚卸しと対象契約の絞り込みに着手し、対応完了までの工数とスケジュールの検討から始めましょう。
イーバリューは、法令判断担当が年間約1,000件の相談に対応し、省庁・管轄自治体への聞き取り調査も日常的に行っています。本改正への委託契約書・WDS対応のご相談も承ります。
Q. 今回の廃棄物処理法施行規則の改正は、いつから何が変わるのですか?
A. 令和8(2026)年1月1日から、一定の条件に該当する産業廃棄物について「対象化学物質の名称」と「その量又は割合」を委託契約書に記載することが求められます。
令和7(2025)年4月22日公布の改正により、委託契約書の法定記載事項を定める廃棄物処理法施行規則第8条の4の2に、第一種指定化学物質に関する記載事項が追加されます。なお、同じ改正に含まれる「電子マニフェスト報告事項の追加」は令和9(2027)年4月1日施行で、本記事の対象外です。
Q. 自社が改正の対象になるかは、どう判定すればよいですか?
A. 次の①②の両方に該当する場合は、対象と判定できます。
①PRTR法(化管法)上の「第一種指定化学物質等取扱事業者」であること、②第一種指定化学物質を1%以上(特定第一種指定化学物質は0.1%以上)含有もしくは付着する産業廃棄物を排出すること。判定はゼロからやり直す必要はなく、PRTR法の対象事業者であれば既に排出・移動量の届出を行っているはずなので、社内で該非判定の結果などを確認できると考えられます。
Q. 委託契約書には具体的に何を追記すればよいですか?
A. 該当する場合は「対象化学物質の名称」と「その量又は割合」を記載します。
これは石綿含有や水銀含有の有無の記載を求める施行規則第8条の4の2に追加されるものです。実務上は、第一種指定化学物質が廃棄物に含まれる場合には、別紙等で情報提供する旨を委託契約書に追記する方法が合理的だと考えられます。
Q. 既存の委託契約書は、施行日までに作り直す必要がありますか?
A. 原則として、施行日までに既存の委託契約書を作り直す必要はありません。契約更新時に改正対応を行えば問題ありません。
ただし、注意が必要です。改正省令の附則では、施行時点で現に締結されている委託契約については、当該契約の更新までの間は従前の例によるとされています。
一方で、施行後に新たに締結する契約や更新する契約には、改正後の記載事項を反映する必要があります。自動更新契約についても、施行日以後最初の更新時期から改正事項を反映する前提で管理するのが安全です。具体的な取り扱いは、念のため管轄自治体や法務担当へ確認したうえで進めることをおすすめします。
Q. まず何から着手すればよいですか?
A. まずは「対象契約の洗い出し」「PRTR対象物質の該非確認」「契約書・WDSの改訂準備」の3点から着手するとよいでしょう。
当面の対応は「改正対応の雛形を整備し、対象を絞り込み、必要な契約のみ再締結(または更新時に対応)する」という流れになります。対象の絞り込みにはPRTR対象物質の分析が必要なケースもあり、各委託先との連絡や締結事務まで考えると余裕のあるスケジュールとはいいにくい状況です。まずは対象契約の絞り込みに着手し、対応完了までの工数とスケジュールを検討することが考えられます。
セミナーインストラクターとして、数々のセミナーを担当。オンラインセミナーの実施やeラーニングシステムを使った動画コンテンツの制作にも注力する。コンテンツの企画から講師までを一貫して手掛け、通年80回以上の講師実績を持つ。また、イーバリューの法令判断担当として、クライアントの法解釈に関する質問や相談に対応。対応件数は年間約1,000件に上る。法令知識だけでなく、省庁や管轄自治体等の行政への聞き取り調査も日常的に行っており、効果的な行政対応のノウハウを持つ。