水濁法改正「六価クロムの規制強化」|イーバリュー株式会社

水濁法改正「六価クロムの規制強化」

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水濁法改正「六価クロムの規制強化」

水質汚濁防止法(水濁法)が改正され、主に「六価クロム」に関する規制が強化されました。
施行は令和6年4月1日ですが、新基準に対応するための準備を検討しておきましょう。

環境基準の変更に伴い、排水基準も強化

今回の改正は、令和3年10月に「六価クロムに関する環境基準値」が変更されたことに伴うものです。

ちなみに、環境基準とは『「維持されることが望ましい基準」であり、行政上の政策目標』とされています。
「このくらいが理想だよね」という基準なので、規制値とは異なります。環境基準を超過したから違反!というものではありません。そもそも、水質などの環境基準は、公共の場を対象としています。海や川が対象となり、「公共用水域」と呼ばれます。

「〇〇湾の水質が環境基準を満たしていない」となっても、原因には様々な要素があるので特定の企業や個人のせいにはできません。

なので「環境基準を満たすために、条例で排水基準を強化しよう」というような「政策」で対応します。

排水基準は、環境基準の10倍が基本

環境基準は規制値ではありませんが、今回の水濁法改正は、主に「排水基準」に関する改正であり、これは規制値の変更、規制強化です。

「排水基準」は、事業場から公共用水域に放流する時点での水質の基準です。有害物質の排水基準は原則として環境基準値の10倍に設定されています。排水基準の方が、環境基準に比べて有害物質を10倍多く含む基準ということですね。環境基準の方が10倍厳しいという言い方もできます。

これは、放流直後に少なくとも10倍程度に希釈されると想定されているからだそうです。

この前提から、六価クロムの環境基準が改正された→水濁法の排水基準も改正となったわけです。

具体的な改正内容

肝心の改正内容は下記のとおりです。

六価クロム排水基準
従来:0.5 mg/L → 改正後: 0.2 mg/L

施行日は前述の通り、令和6年4月1日です。既存の特定施設を持つ事業場については、施行後に半年間の経過措置があります。施設が施行令別表第3(参考リンク内別添1をご参照ください。)に該当する場合、1年間の経過措置となります。

そのため、実質的に新基準が適用されるのは、令和6年10月1日もしくは、令和7年4月1日です。(新設の事業場を除く)

また、電気めっき業に属する特定事業場には、暫定排水基準として従来の0.5 mg/Lが3年間適用されます。

施設の種類や業種によって、施行までの期間はそれぞれですが、排水基準の強化に対応するためには相応の準備期間が必要です。生産設備の調整や、排水処理施設の能力を強化しなければならないケースがあるかもしれません。

それぞれの準備期間は「新基準に対応する難易度」と比例していると考えられますので、まずは現状把握から、準備・検討を進めていきましょう。

同改正では、「六価クロムの地下水浄化基準」「大腸菌の排水基準」についても改正されています。
これらの改正につては、下記参考リンクからご確認ください。

参考:https://www.env.go.jp/press/press_02672.html

Takeshi Sato 環境情報ソリューショングループ マネージャー

セミナーインストラクターとして、数々のセミナーを担当。オンラインセミナーの実施やeラーニングシステムを使った動画コンテンツの制作にも注力する。コンテンツの企画から講師までを一貫して手掛け、通年80回以上の講師実績を持つ。 また、イーバリューの法令判断担当として、クライアントの法解釈に関する質問や相談に対応。対応件数は年間約1,000件に上る。法令知識だけでなく、省庁や管轄自治体等の行政への聞き取り調査も日常的に行っており、効果的な行政対応のノウハウを持つ。